『未来の年表』著者の河合雅司氏。(本人提供)
『未来の年表』著者の河合雅司氏。(本人提供)

 2017年に刊行された『未来の年表』(講談社現代新書)は、このまま人口減少が進むと「将来の日本」はどんな姿になるかを緻密なデータから導き出した。その予測は世に衝撃を与え、累計で88万部突破の大ベストセラーとなった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で世界は一変した。未来の年表にも“上書き”される部分はあるのか。著者でジャーナリストの河合雅司氏に「アフターコロナ」の日本の未来について聞いた。

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■介護離職の大量発生に拍車がかかる

 新型コロナウイルスの蔓延によって、私たちは世界が大きく変化する瞬間を目の当たりにしました。アフターコロナの世界はどうなるのか、懸念している人も多いことでしょう。

 私は、日本のアフターコロナは、世界各国とは少し様相を異にするだろうと見ております。というのも人口の激減期と重なるからです。

 例えば、介護を取り巻く環境です。私は、人口減少社会で起きることを明らかにした『未来の年表』で、2021年には「介護離職が大量発生する」と警鐘を鳴らしましたが、コロナ禍の影響で状況はさらに深刻になる可能性があります。

 アフターコロナの世界では、国境を超える人の往来が細ることが予想されます。来日する外国人労働者の数が減り、介護者の人手不足が生じるでしょう。介護施設は思うように人が集められない状況が続けば、閉鎖に追い込まれる施設が出てくるかもしれません。

 介護従事者が不足する一方で、要介護者が推計以上に増える可能性があります。

 その理由は、高齢者がコロナの感染リスクを恐れ、外出を避ける人が増えることが予想されるからです。動かなくなると、身体的な衰えが進みます。その上、人と接する機会も減るので、会話が少なくなり認知症の悪化につながるリスクも高まります。対コロナに意識が向きがちですが、実はこうした間接的な影響も重大です。

 これによって、「受け入れ施設」と「要介護者」の需給バランスの崩壊が起こり、家族が在宅介護を余儀なくされる。その結果、やむなく離職せざるを得ない人々が増加するという悪循環が加速することが予想されます。

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膨れ上がる生活保護費