■社会保障サービスが削られる一方、生活保護費は膨れ上がる

 企業活動の停滞が長期化すると収益が悪化する企業が多く出てきます。結果的に、法人税や法人事業税などの税収が一気に落ち込みます。経済活動が「いつまで」「どの程度」抑制されるのかにもよりますが、国や地方自治体の財政悪化は、まず避けられないでしょう。今の状況では、来年度予算編成も危ういのではないでしょうか。

 財政悪化に伴い、もともと抱えていた社会保障をめぐる課題が深刻化します。2024年には団塊の世代が75歳以上となり、また3人に1人が65歳以上となり、膨張する社会保障費の抑制が大きな課題となります。

 今回のコロナ禍による歳出は莫大な額なので、今後はこれまでのような社会保障費の伸びの抑制だけではなく、医療や介護のサービス抑制など、社会保障の本体に切り込まざるを得なくなるでしょう。

 消費が落ち込めば、消費税収を財源とする幼児教育の無償化など、これまでの政策で積み上げてきた事業も、まかなえなくなる可能性が大きい。

 ただ、失業者が増えると生活保護の額は膨れ上がりますので、結果的に、「サービスの質は低下するが、見かけ上の社会保障の額面は大きくなる」という状況が予想されます。もちろん、社会保障だけでなく、防衛費や自然災害への対策など、多岐にわたる分野で予算削減を迫られるでしょう。

 救いは、現時点であまり株価が落ちていないことです。株価まで大きく下がる事態になれば、年金財政も打撃を被りますし、国の財政は足元から崩れていくでしょう。

■テレワークの普及で「成果主義」と「郊外分散」が進む

 コロナ禍がもたらしたテレワークの普及は、働き方を大きく変えています。しかし、テレワークそのものは、コロナ禍がなくても普及すべきタイミングでした。少子高齢化に伴い働き手世代が減っているので、企業は一人あたりの労働生産性を上げなければなりません。社員が通勤に時間をかける働き方はあまりに非効率だからです。

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地価の評価も大きく変わる