授業はオンライン会議ツール・Zoomを通じて行われた。開始から約30分後、Zoomの同時接続限界である1000人を超える数の学生が参加し、ツイッターも一時騒然となった。なお、リアルタイムで授業に参加できなかった学生のために配信動画はアーカイブされており、後で見ることができるようになっている。

「大学の講義室のキャパシティーは300人ぐらい。それがオンラインによって1000人に拡張された。履修者数も昨年は525人だったのが、今年は1500人を超えました。従来ではできないことができたと思っています」(同)

 オンライン授業の経験が豊富な人は周りに誰もいない。ティーチング・アシスタント(TA)にもZoomに参加してもらい、山口教授はTAに話しかけるようにしながらパワーポイントのスライドを進めた。授業を受ける学生にはビデオもマイクもオフにしてもらうかわりに、チャット欄にコメントや質問を思う存分書いてもらい、TAがいい質問を拾って読み上げた。ちょうど生放送のラジオ番組のようなイメージだ。

 しかし前述のハッシュタグをたどってみると、Zoomのチャット欄に苦言を呈するツイートも散見される。「そんなに細かいツッコミをするなよ」といった内容だ。これを受けて山口教授は授業後、自身のツイッターで「(前略)細かいツッコミは当然で、研究者はそれらを想定して論文を書きます。それと、私はggrks(編集部注・ググれカス=インターネットで自分で検索しろ、の意味)みたいな質問でもありがたいです。聞き手が何に躓(つまず)くのかわかるので。話し手としては無反応が一番困ります」とツイートした。

「大教室の授業だと学生とのコミュニケーションが取りづらい。しかしチャットであれば、どんな学生でも思ったことを発信してくれる。顔が見えないとはいえ、大量のコメントが寄せられるので、むしろ従来よりもインタラクティブな授業になったと感じています」(同)

 冒頭のツイート(「授業がトレンド入りするのはやばい」)は、この授業の担当教員の一人であり、全体のオーガナイザーである渡辺安虎教授によってリツイートされた。教員たちのオンラインでのアピールに積極的な姿勢が、多くの学生を惹きつけるのかもしれない。

(文/白石圭)