イラスト/寺田久美(週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より)
イラスト/寺田久美(週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より)

 中国の伝統医学である「中医学」の世界では、人間のからだは「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の3要素で構成されると考えられています。なかでも「血」は、からだのなかの「めぐり」を整えるための重要なもの。血のめぐりを整えれば、気になるプチ不調が改善し、大きな病気を未然に防ぐことにつながります。週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』で、邱紅梅(きゅうこうばい)医師に取材した内容をお届けします。

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 血のめぐりがいい状態……というと、私たちは「血液サラサラ」「しなやかな血管」というイメージをもちがちです。これは西洋医学的な血のとらえ方で、血管のかたさや血液の
粘度、流れるスピードに注目しています。家に例えるなら、排水口や水道管だけをチェックしている状態といえるでしょう。

 中医学における「血(けつ)」は、それだけにとどまりません。家全体の掃除が行き届いているか、空気がよどんでいないか、においがないかなどを総合的に見ることで、家全体の「めぐり」を考えるのです。

 中医学における「血」は、「気・血・水」のひとつです。血管を通る血液だけでなく、骨髄にある「血液のもと」や、全身に送られる栄養(滋養)、さらに代謝による老廃物の運搬
や排出なども、中医学では「血」としてとらえます。ですから「血のめぐり」という場合、血液だけでなく血中の栄養素やリンパ液の回流なども含まれると考えてください。

■冷え、疲労、ストレスがお血を引き起こす要因

 このような「めぐり」が滞っている状態を、中医学では「お血(けつ)」といいます。お血の「お」(注:於にやまいだれ)は、どんよりしている、汚れているという意味です。川の水がよどんだり、詰まったり、流れが途絶えたりしている状態をイメージするとわかりやすいと思います。

 お血のほかに「血」の不調として「血虚(けっきょ)」があります。血が薄い、少ない状態を指しますが、これも「血のめぐり」を悪くする原因のひとつです。川の水が少ないと流れが悪くなるように、血が少ないこともお血の一種と考えていいでしょう。

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