一方、オンライン授業でしっかりした教育を準備しているとして、「一度、納入した授業料はいかなる理由があっても返還しない」ことを原則に、応じないところもあるようだ。大学経営を考えると、学生に配慮できることに限界はあるとする小規模大学もあった。

 大学教員に話を聞いてみた。大学教育を専門として、授業料、入試のあり方に詳しい教育社会学者3人の意見から。

 まず、中京大国際教養学部の大内裕和教授。学生の貧困問題、ブラックアルバイト対策に取り組んできた。政府に給付型奨学金の充実を求めている。

「オンライン授業で『教育の質』が保たれないというのは、客観的に証明することは容易ではないと思います。大学の各教員は『教育の質』が保たれるよう必死の準備をしています。教員の授業準備の負担は例年よりも大きいでしょう。『コロナ災害』は大学自身も被害者であり、政府は大学のオンライン教育への経済的支援、学生への支援(給付型奨学金の増額)を充実させるべきだと考えています」

 東京大教育学部の両角亜希子准教授は、大学経営、ガバナンスに詳しい。昨年末に発足した大学入試のあり方に関する検討会議のメンバーだ。

「海外の大学でもこのような議論が学生から出ており、値上げを凍結したり、在学期間の延長措置などを提示したりするケースはあるものの、授業料の返還等には応じていないケースが多いようです。多くの大学ではオンライン授業を提供するためにむしろ施設設備費など新たに投資して、対応したケースもあるようです。まず大学が検討すべきものとしては、いま、オンライン授業を受けるために困難を抱えた学生がいたら、その支援をどうするかが先ではないでしょうか」

 桜美林大大学院・大学アドミニストレーション研究科の浦田広朗教授は、通信教育課程で教えている。

「オンライン授業は、教室で漫然と講義を受けるよりは、マン・ツー・マンに近い、充実した学修が可能であり、教室での授業経験と同等以上のものをオンラインで提供できるので返還には及びません。しかし施設費については、図書館等を閉ざし、さらには入構禁止期間が長期にわたるような場合は、施設利用によるキャンパス経験が得られないわけですから、一定割合を返還せざるを得ないでしょう(郵送による図書の貸し出し等、入構しなくても同等の経験が得られるようなサービスを提供しない限り)。ただ、大学の財務状況を考えると困難ですが。今回のオンライン授業対応で、大学には追加的にコストがかかっていますが、光熱水費などについては、かなり削減できる可能性はあります」

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