「正直、日用品が品切れするよりも恐ろしい。『吸わなくても生きていける』と言われるかもしれませんが、これは『依存』なので、そのレベルの話じゃないんです。感染リスクを理解はしているが、急に禁煙を求められても、こちらは心の準備ができていない」

 海外の報道によると、フランスでは、安いたばこを買い求めようと外出禁止令を破ってスペインへ向かった男性が山で遭難した。男性はその後救助され、罰金が科されたという。愛煙家によっては、たばこはそれほどまでに手放せないものらしい。

 一方で禁煙派は、これを「好機」と捉えているようだ。日本禁煙学会の担当者はこう話す。

「国際肺疾患連合のコメントは大歓迎です。私たちも1月の時点で、喫煙者の新型コロナウイルスの重症化リスクを懸念し、厚生労働省に対してたばこの規制を要望していた。ですが、まだまだたばこのリスクの認識は浸透していないと思います。日本では約2,000万人弱の喫煙者がいるとされています。この人たちの感染リスクを下げることが、感染爆発の防止にもつながります」

 ヘビースモーカーだった父を4年前に肺がんで亡くしたという神奈川県の50代女性も「たばこは百害あって一利なし」とバッサリだ。

「そもそも、あれだけ有害なものを合法としているのがおかしい。夫もかつては喫煙者でしたが、『禁煙』を条件に結婚しました。いっそのこと、たばこは法律で禁止してほしいくらいです」

 新型コロナウイルスの影響で、日本国内でたばこの生産・流通が停止する可能性はあるのだろうか。国内約60%のシェアを占めるJT(日本たばこ産業)に取材を申し込むと、広報から書面で次のように回答を得た。

「新型コロナウイルスによる肺炎については、報告された科学的な調査結果等が限られており、喫煙と重症化との関連のみならず、感染経路や重症化のメカニズム等、多くの情報について未だ明らかになっていないものと承知しております」

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