ただ、当時、子役による癒やしというパターンで最大の成果をあげたのは朝ドラではなかった。それは同じ4月の下旬に始まり、7月末まで放送された「マルモのおきて」(フジテレビ系)である。

 阿部サダヲとスタート時6歳だった芦田愛菜のダブル主演で、同年代の鈴木福や本田望結が共演。フジの日9というのはけっして強い枠ではなかったが、数字はうなぎのぼりで20%台に乗り、裏の日曜劇場「JIN-仁-」に迫る高視聴率を記録した。

 さらに、芦田と鈴木(と、犬)がうたった主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」(薫と友樹、たまにムック。)も大ヒット。エンディングで毎回披露されたダンスも流行し、この年の「紅白歌合戦」の目玉のひとつとなった。

 子供メインの連ドラがここまでヒットすることはそうそうあるものではなく、やはり震災直後という状況が関係したのだろう。日本中の人が大なり小なり打ちひしがれるなかで、子役の芝居が癒やしをもたらしたのだ。

 話を朝ドラに戻すと、震災復興への応援という意味合いで機能したのは、2年後の「あまちゃん」だった。被災地となった岩手沿岸を舞台に、子役ではないが、朝ドラヒロイン史上有数の透明感やあどけなさを持つ能年玲奈(現・のん)が人気を博したものだ。また、アイドルが題材のひとつだったことから「暦の上ではディセンバー」「潮騒のメモリー」などの劇中曲が話題になった。

 そんな「あまちゃん」と今回の「エール」は似たところがある。被災地の福島が舞台であることや、作曲家・古関裕而がモデルのため、音楽劇としての要素が大きいことだ。そこにコロナ渦もあいまって、日本の朝を元気にしてほしい、してくれるのではという視聴者の思いはいつにもまして強くなりつつある。そういう思いに、序盤は見事に応えてくれているのではなかろうか。

 ちなみに、主人公がメインだった第1週に対し、第2週はヒロインが中心に描かれる。第1週で、主人公はヒロインが合唱に参加する姿を見て恋に落ちるわけだが、第2週ではいよいよ彼女の歌が聴けることになる。

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