とまあ、さながら子役祭りと化している序盤の「エール」。これは何よりこの作品への追い風になっている。朝ドラの人気子役としては、かつての斉藤こず恵(鳩子の海)に小林綾子(おしん)、マナカナ(ふたりっ子)だったり、最近の鈴木梨央(あさが来た)、住田萌乃(マッサン)といったところが思い出されるが、今回はまた、作品の置かれた状況が特殊なのだ。

 というのも、前作「スカーレット」の終盤はいささか重苦しい空気だった。ヒロインのひとり息子の闘病と夭折が描かれたからだ。それは人間の孤独や生のかけがえのなさを真摯に追究するもので、ファンを大いに感動させたが、新たな作品を始めるにあたってはその空気を入れ替える必要がある。子役たちのみずみずしい芝居は、その役割を見事に果たした。

 ただ「スカーレット」の終盤が重苦しく感じられたのは、世の中の空気も大きい。言わずと知れた、新型コロナウイルス渦だ。1月から3月にかけて連ドラに乱立した医療モノの多くが苦戦したのも、こんな時期にドラマでまで重苦しい気分になりたくないという視聴者感情が影響していたからだった。

 そんななかで始まった「エール」はまず、窪田・二階堂による原始人コスプレからのフラッシュモブダンスで幕開け。そして、この子役祭りで重苦しさを吹き払った。これは絶妙に、朝ドラ視聴者の感情に添ったものでもあったのだ。

 ではなぜ、子役の芝居は癒やしをもたらすのか。今回のコロナ渦による世の空気は9年前の東日本大震災によるそれと比較されたりするが、当時、週刊誌などのメディアがこぞって掲載したのが、被災地の子供たちのあどけない写真だった。その流れで、そういうものを集めた写真集が発売されたり、写真展が開催されたりしたものだ。

 つまり、子供たちのあどけない表情やしぐさには、大人たちの重苦しい気分を癒す効果がある。子役たちの芝居にも、同じ効果が期待できるわけだ。

 実際、震災翌月に始まった朝ドラ「おひさま」でも、ヒロインの子供時代を演じた八木優希が人気を博した。すでに月9ドラマ「薔薇のない花屋」(08年)で香取慎吾扮する主人公の妹を演じてブレークしていた子役だ。

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「エール」と「あまちゃん」の共通点