さらに「これだけでは不十分」と、ブーマーの場外打球に最高2億円の保険をかけた。2月7日から3月6日までの間に打球が一般通行人に当たり、複数死亡の場合は2億円が支払われ、ケガや車などの破損の場合も、被害に応じて保険金が下りるというもの。

 そして、適用開始直後の2月8日、ブーマーは6発の場外弾を放ち、うち1発はレフト後方にある市営プールのガラス窓を直撃する153メートル弾。球団関係者が「保険をかけておいて良かった」と胸をなで下ろしたのは言うまでもない。

「西宮に帰ってもこういう当たりを続けるようなら、公式戦も考えなければ」と先のことまで心配していた岡田栄球団社長だったが、1年目のブーマーは17本塁打に終わり、「場外本塁打を打ったらプレゼント」と銘打った2メートルのブーマーパンも出番なし。正真正銘のブーマー(ブームを巻き起こす男)になったのは、三冠王を獲得した2年目からだった。(文/久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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