ECMOはとくにウイルスによる重症肺炎で治療成績が良いことは知られており、新型コロナウイルス感染の重症肺炎でも効果が期待されているという。

「もともと“ECMO大国”である中国でも現在、新型コロナウイルス感染による重症肺炎患者に対し、相当数のECMOが使われているようです」(同)

 ウイルス性肺炎へのECMOの有効性が世界的に周知されたのは、2009年の新型インフルエンザのパンデミック以降だ。このとき、新型インフルエンザにより重症呼吸不全に陥った患者の多くがECMOによって救命され、欧米でのECMOによる救命率は70~80%だったという。日本でも14例にECMOが使用されたが、当時はECMO管理に熟練した医師も不在という状況で合併症に悩まされるなどして、救命率は38%にとどまった。

 このときの苦い経験から、日本呼吸療法医学会が2012年に『ECMOプロジェクト』を立ち上げ、日本でも急性呼吸不全症例に対するECMOによる治療成績を上げようと、情報の共有、管理方法の勉強会や海外研修などをおこなってきた。参加施設はいまや全国93施設(2020年2月27日現在)だ。

「日本COVID-19対策ECMOnetの中心的施設では、ECMOの治療成績は大変優れており、世界と肩を並べる70~80%の救命率を達成しています。新型コロナウイルス感染でもすでに数例、重症患者をECMOにより救命しています。症例数を多く経験している施設であれば合併症の割合は高くないです。今後、さらに重症患者が増加した際にはECMO管理が切り札の一つになるのは間違いありません」(同)

(文/石川美香子)