PVを集めることにこだわったのには、大きな理由がある。

「研修医時代も含めて、7年間臨床を経験して実感したのは、誤った情報を信じている患者さんが多いこと。患者さんは、たくさんある医療情報サイトやSNSで情報収集してから受診する傾向がありますが、なかには誤った情報を信じてしまい、本来は治療が必要なのに病院に来ない人もいるかもしれない。自分が正しい情報を発信していかなければならないと感じたんです」
 
 必要としている人に正しい情報を届けるために、検索エンジンの上位に表示されることは大きな意味があるのだ。

■ツイッターでは、患者の本音がわかる

 博士号をとるために大学に戻って時間ができたのを機に、サイトを開設した。 

「当時放映されていた医療ドラマ『コード・ブルー3』の解説をしたら評判がよくて。SNS上でも評判になりました。医療に興味がない人に情報を届けるためには、エンターテインメントとうまくタイアップすることが大事なんだと実感しました」
 
 以前は匿名でサイトを運営していたが、現在は本名にしてツイッターやインスタグラムでも情報を発信している。

「患者さんは医師には遠慮しがちです。でもツイッターでは、患者さんの本音がわかる。臨床で患者さんと接するうえでも役立っています」
 
 ツイッターによって人脈が広がり、東京で開催したオフ会には、100人以上の医療従事者が集まったという。

「医師の世界は閉鎖的ですが、ほかの病院の医師や看護師、理学療法士の方たちと知り合えて、貴重な機会でした」
 
 山本医師は大学院を修了後、臨床の現場に戻るが、今後もサイト運営は続けていく。

「『本業に集中しろ』『お金儲けのためにやっている』などネガティブなコメントもありますが、大半はポジティブなもの。反響が可視化されるの
もSNSのいいところです」(文/ライター中寺暁子)

山本健人医師(やまもとたけひと)/2010年京都大学医学部医学科卒。複数の市中病院勤務を経て、現在京都大学大学院医学研究科博士課程在籍。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎新書)など。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、がん治療認定医など。