大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)

歯ブラシを使って器用に歯を磨くチンパンジー (c)朝日新聞社
歯ブラシを使って器用に歯を磨くチンパンジー (c)朝日新聞社

「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」

【やっぱりチンパンジーは賢い! 写真はこちら】

 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第8回の質問は「人間はほかの動物より賢いのですか?」です。

*  *  *

【Q】人間はほかの動物より賢いのですか?

【A】賢さにはいろいろな種類があり、動物によってそれぞれ賢さが違う

 人間が得意な種類の賢さは「文明を築く賢さ」です。その面に限れば「ほかの動物より賢い」と言えます。

 人間がわからない音や光を感知できる動物は数多くいます。たとえばコウモリは、人間には聞こえない高い音を発し、その反射音から障害物を検知して闇夜でも飛行可能です。ゾウは、人間には聞こえない低い音でコミュニケーションをとっています。東南アジアでは津波が襲ってきたとき、ゾウの集団がいち早く気づいて逃げ出すことが知られていますが、津波から生じる低い振動音を遠くから検知したものと考えられています。

 さらに、モンシロチョウは人間には見えない紫外線が見え、それによってオスとメスを識別しています。一方、多くのヘビは人間には見えない赤外線を感知する器官をもっており、それを使って夜間に獲物を探しています。また、におい検知では、イヌが非常に優れていることもよく知られています。

 つまり、「今ここの現実を把握する賢さ」においては、人間に匹敵する(あるいはそれ以上の)動物がたくさんいます。そこで注目されるのが「見ていない現実を想像する賢さ」です。

 あなたは、学校の教室にいるとき、教室の中の「今ここの現実」についてのみ考えていますか。現に先生が授業していても、「隣の教室は何の授業をしているかな」とか、「昨日の体育の授業は楽しかったな」とか、「明日、宿題をやってこないと怒られるかな」などと、直接体験していない現在、過去、未来の現実を想像していますよね。この想像が、人間らしい賢さなのです。

 進化心理学者のニコラス・ハンフリーは、人間とチンパンジーの遺伝情報は98パーセント以上同じであるにもかかわらず、なぜチンパンジーでなく人間が文明を築いたのかを考えました。彼によると、現実の把握能力が高いチンパンジーは想像力を高めずにいた一方、現実の把握能力が低い人間はそれを補うために想像力を高めたといいます。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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想像力が生み出したものとは?