次も“人生初”つながりのエピソードを紹介する。清原が野球人生で初めての隠し球アウトという珍プレーを演じたのが、2001年4月13日の横浜戦(東京ドーム)だ。

 0対0の4回裏、巨人は1死一塁で清原がボテボテの三ゴロ。「併殺だけは勘弁!」とばかりに、死に物狂いで一塁ベースを駆け抜け、何とかセーフになった。ここまでは良かった。

 ところが、ホッとするあまり、周りへの注意がおろそかになり、一塁手の佐伯貴弘がカバーに入った河原隆一にボールを手渡すフリをして、ミットの中に隠し持っていることに気づかない。いったんベースに戻り、離塁した瞬間、佐伯に背中をタッチされ、見事アウトになってしまった。

「(隠し球は)野球をやってて初めての経験や。ビックリしたわ」と苦笑する清原に対し、佐伯は「卑怯な手でやりたくなかったが、どうしても勝ちたかった」と言い訳したが、皮肉にも、試合は9回に追いついた巨人が延長10回サヨナラ勝ち。

 さらに3日後の4月16日朝、自宅近くの駐車場に止めていた佐伯の愛車が車上荒らしに遭い、タイヤが4つとも盗まれる事件が起きた。

 明らかにプロの手口の犯行だったが、隠し球の直後とあって、「怒ったファンが報復したのではないか?」の憶測も流れたことが、懐かしく思い出される。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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