ラグビー関連のイベントなどに引っ張りだこの中川家(C)朝日新聞社
ラグビー関連のイベントなどに引っ張りだこの中川家(C)朝日新聞社

「ピッ、ノックオン、スクラム、帝京ボール」

【写真】超貴重!大学生の頃の大久保佳代子さん

 中川家の礼二は「アメトーーク!」(テレビ朝日系)に出るたびにこのネタをやり続けていた。ラグビーの審判のものまねだ。ラグビーという競技自体がマイナーだったため、このネタは「マニアックものまね」というカテゴリーに入れられ、「また中川家がマニアックなことやってるよ」というふうに受け止められていた。

 ところが、ここへ来て状況が一変した。日本で開催中の「ラグビーワールドカップ2019」が空前の盛り上がりを見せているのだ。4年前の大会では日本代表の五郎丸歩選手が注目され、「五郎丸フィーバー」が起きていたが、今回の熱狂はそれをはるかに凌ぐものだった。

 日本代表は大方の予想を覆す大健闘を見せて、4戦全勝で予選プールを勝ち上がり、初めてベスト8に進出。日本代表の試合は地上波テレビでも放送され、軒並み高視聴率を記録した。

 そんな中で、ラグビー芸人である中川家にもラグビー関連の仕事のオファーが殺到。ラグビー好きの芸人は数多くいるが、その中でも最も注目される存在になった。

 彼らは高校時代ラグビー部に所属していたが、同級生の間では「なんでそんなマイナーなスポーツやってるの?」と冷たい目を向けられていた。芸人になってからも、ラグビーのネタをやってもなかなか観客に伝わらず、悔しい思いをしてきた。そんな彼らにとって、ようやく来たラグビーブームは涙が出るほどうれしいものなのだ。

 そして、ラグビーと同様に中川家にも再評価の声が高まっている。「週刊文春デジタル」の「好きな芸人ランキング」でも22位から12位に順位を上げていて、着実にファンを増やしつつある。2019年4月には「DAYS」(ニッポン放送)というラジオ番組も始まった。

 現在、人気と実力を兼ね備えた中堅漫才師のビッグ3と言えば、「中川家、ナイツ、サンドウィッチマン」の3組である。彼らはいずれも圧倒的な実力を持っていて、全世代を爆笑の渦に巻き込むことができる。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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