スタッフのエミカさんはフィリピン出身。コーヒーを作ってもらっている間にも「出身は?」「どうして英語が上手なの?」などの質問をしてみる。この程度の英会話すらしたことがなかったが、質問するだけなら意外とできるじゃないか、と小さな自信を得た。

 しかし最後、逆に「Are you guys gonna walk around here?(これから近所を歩くんですか?)」と質問され、記者の思考が停止。数秒ののち、「No, I have been around here.」と意味不明な返答をしてしまう。選択式問題で誤った解答をした時のようなちぐはぐな会話になったが、エミカさんの笑顔の「OK!」に安堵。渇ききった口をアイスコーヒーで湿らせた。

 つぎは東京・恵比寿の駅前にあるカメラ・レンズ販売店「大沢カメラ」でショッピング英会話をすることに。記者の趣味のカメラについて、英語で話そうという趣旨だ。実は取材前夜、このときのために「depth of field(被写界深度)」などの用語を予習し、一人カラオケボックスにこもってひたすら英文を声に出し、頭に叩き込んだ。その成果を見せようと意気込んだが、アイシャさんはビデオカメラを回しながら「このレンズのdepth of field は~」と言っている。すでに知っていることを説明しても仕方がないじゃないか!

 そう思っていると、店主が「ボケ」のある写真の撮影術を教えてくれた。レンズを望遠に切り替え、被写体と背景の間の距離を長く取ると、「ボケ」が強調されたインスタ映えする絵が撮れるそうだ。ビデオカメラに向かって、それを英語に訳してみる。アイシャさんが店主の説明を聞いていたため、つたない英語でも理解してもらえたが……ゼロから英語で話しても、伝わっただろうか?

 その後は六本木へ、今度はタカさんの運転で移動。「運転中に英語で話しかけられると頭が回らなくてしどろもどろになる」と言っていたタカさんに、それを無視して先ほどのボケる写真のコツについて英語で説明してみる。「OK, so please show me in Roppongi.」。なんだかうまくかわされたようにも思うが、そうこうしているうち六本木に到着。

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英語で撮影のレクチャー