壁にぶつかっている感のある堂安律 (c)朝日新聞社
壁にぶつかっている感のある堂安律 (c)朝日新聞社

 9月5日のパラグアイ戦の前半25分。中島翔哉と南野拓実の2度のパス交換を経て、絶対的エース・大迫勇也がラストパスを前線に供給した瞬間、堂安律がタテに抜け出し、ペナルティエリア中央に侵入。守護神と1対1になった。カシマスタジアムに集まった2万9000人の大観衆が総立ちになる中、背番号21は日本2点目となるゴールを確実に決めると思われた。

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 ところが、股抜きを狙ったシュートはGK正面に飛び、ネットを揺らせずじまい。ビッグチャンスを逸した本人は天を仰ぎ、スタンドからため息が漏れた。

「悔やまれるところ? もちろんゴールですね。そこを決めていれば文句なしだと思いますけど、そこだけが反省点ですね」と最終的に2-0で勝利した試合後、彼は悔しさを露わにした。「ゴール欠乏症」という深刻な課題を解消できない21歳の若武者は、代表に合流するたび焦燥感を募らせているようだ。

 森保一監督率いる新生日本代表が発足したちょうど1年前。若干20歳で抜擢され、瞬く間に2列目のレギュラーに定着した左利きのアタッカーは「本田圭佑の後継者」になるべき存在だと脚光を浴びた。ワールドカップ3大会連続、計4ゴールの偉業を達成した偉大な先輩と同じ関西出身で、ガンバ大阪アカデミーで育ち、オランダから海外キャリアをスタートさせた点も一緒。

「2018年ロシアワールドカップに同い年のキリアン・エムバペやイ・スンウが出ているのを見て、『自分自身、何してるんや』って思わされました」といった負けん気の強さやビッグマウスも共通していたからだ。

 代表でのスタートは本田をはるかに超える勢いで、初キャップから3試合目の2018年10月のウルグアイ戦で代表初ゴールをゲット。今年1月のアジアカップでも攻撃陣の主力に位置付けられ、初戦・トルクメニスタン戦でいきなりゴールを挙げたところまでは順風満帆だった。

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順調だった歩みに変化が…