※写真はイメージです(gettyimages)
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 夫婦関係を良くするために、家を掃除して手料理を作り、居心地の良い空間をつくる……。そんなアドバイスはよく聞くけれど、実際はどうなのか。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「ほっとする場所」について解説する。

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 今年のお盆は、台風10号のおかげで、帰省や旅行で苦労された方も多いのではないかと思います。

 旅先から自分の家に帰ってくるとほっとしますよね。特に海外から帰ってくると私は風呂に入り、何か和食っぽいものを食べたくなります。それで、あー、帰ってきたなー、とスイッチが切り替わる感じがします。

 帰省の場合は、形的には出かけ先ではありますが、帰るとほっとする人も多いと思います。もちろんなかにはそうじゃない人もいます。一方、配偶者の実家はもう少し意見が割れます。配偶者の実家は居心地が悪いという人もいれば、配偶者の実家のほうがほっとできる、という人までいます。

 ほっとする、というのは、「自分は(ここにいるべき理由がなくても)ここにいていい」というような感覚だと思います。自分がいていい場所、すなわち「自分の居場所」です。

 かつては多くのサラリーマンにとって「理由がなくてもここにいていい」と感じられる場所であった会社が(私が昔働いていた会社には、休日出勤すると、土日行くところがないからと言って会社にきてうろうろしている先輩社員がいました)、働き方改革のせいで、てきぱきと最低限の時間で仕事を終わらせて、帰らなければならない場所になってしまいました。言ってみれば、行きつけだった、なじみのマスターが経営するいつまで居てもいい居酒屋が、回転率が勝負の立ち食いそば屋になってしまったようなものでしょうか。

 もちろん、長時間労働がいいと言っているわけではありません。ただ、人は自分の「居場所」、ほっとできる場所や環境が必要なのです。

 進学や就職、転勤で大好きな実家を出なければいけなくなってしまい、なかなか1人暮らしに慣れないという人もいれば、一方では、実家がほっとできなくて、実家を出たいが一心で頑張って勉強して遠方の大学に入り、1人暮らしをはじめてようやくほっとできる場所を得たという方もいます。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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