宗谷本線の幌延~天塩中川間を行く風っこ。眼下には天塩川の絶景が広がる(C)朝日新聞社
宗谷本線の幌延~天塩中川間を行く風っこ。眼下には天塩川の絶景が広がる(C)朝日新聞社
北の大地を走る「風っこ そうや」。両先頭車にはJR北海道の「北海道の恵み」車両、中間に「風っこ」車両が連結される(写真/PIXTA)
北の大地を走る「風っこ そうや」。両先頭車にはJR北海道の「北海道の恵み」車両、中間に「風っこ」車両が連結される(写真/PIXTA)
「風っこ そうや」号の運行初日。多くのファンや観光客が集まった(C)朝日新聞社
「風っこ そうや」号の運行初日。多くのファンや観光客が集まった(C)朝日新聞社

 この夏、JR北海道・宗谷本線にトロッコ風車両を使用した観光列車「風っこ そうや」が運転されている。JR東日本のジョイフルトレイン「びゅうコースター風っこ」をJR北海道が借り受けて運行しているもので、北端の鉄路に新風が駆け抜けている。

【写真】雄大な北の大地を走る「風っこ そうや」

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■JR3社の共同で実現した北辺の観光列車

「風っこ そうや」が走る宗谷本線は、旭川と稚内とを結ぶわが国最北の鉄道路線だ。全長259.4kmの多くで牧草地や原野が広がり、沿線には町らしい町も数えるほど。北辺のイメージと合わせ、旅情が募る路線のひとつではないだろうか。

 この観光列車が運行を開始したのは、7月27日のこと。2018年9月に多大な被害をもたらした北海道胆振東部地震を受け、観光復興への願いを託して企画されたもので、JR北海道とJR東日本、JR貨物の3社の共同で実現へとこぎ着けた。

 実際には、JR東日本の「びゅうコースター風っこ」をJR北海道が借り受けて運行し、本州から北海道への車両運搬はJR貨物が担っている。

 今回、「風っこ そうや」として宗谷本線を走る「びゅうコースター風っこ」は、2000年にキハ48形気動車の改造によって誕生したジョイフルトレイン。JR東日本仙台支社管内を中心に、左沢線や北上線、陸羽東線、只見線などで運行されている。

 車両の最大の特徴は、側窓のガラスを取り払って吹き抜けにできることだろう。天井近くから膝元まで迫る大型側窓の肘掛けにより上部を開放することで、トロッコ車両と同様のオープンな車内環境を整えた。空調と引き換えに窓の開く列車が数を減らすなか、開け放った車窓を五感で実感できるのは、それだけでもプレミアものといえそうだ。肘掛けより下もガラス窓となっており、左右だけでなく上下方向の開放感も抜群の展望車両なのである。

 2両編成の車内には、木造のベンチ風座席をボックス状に配置し、各ボックスにはテーブルが備わる。また、天井部分は骨組みや配線の一部などを露出させたデザインで、傘付き白熱灯とのコラボレーションは洗練されたレトロ感が漂う。おしゃれなカフェを思わせるつくりといったらいいだろうか。

 また、雨天などに備え、各窓には電動式ビニールブラインドを設置。冬期にははめ込み式窓が用いられるほか、車内で「だるまストーブ」が焚かれるなどの季節にあった形態を取れる。

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北の大地の風をじかに体感、スローな旅を楽しむ