例えば、私立大学に通う一人暮らしの学生に対する支給額は、現行制度では満額で年間約48万円。一方、新制度では年間約91万円に拡充される。さらに、新制度では文科省が定める一定要件を満たした大学や短大、専門学校を対象に、入学金と授業料が減免される。私立大学の場合、上限で入学金の約26万円、授業料の約70万円の減免を受けることができる。久米さんはこう解説する。

「住民税非課税世帯なら厳しい成績基準もなく、学費の減免に加え生活費も支給されるため、国立大学であれば実質的に無償で進学できることになります。住民税非課税世帯に準ずる家庭に対しても、経済状況に応じた割合での支援が行われます」

 例えば、4人世帯で年収約300万円なら奨学金給付額と学費の減免額の3分の2が支援され、年収約380万円なら3分の1が支援される。JASSOが公表している数字はあくまで目安であり、各家庭の経済状況が考慮される。世帯収入が提示された金額を超えていても相談してみる価値はある。

■JASSOの返済利率が低い点は認識しておきたい

 一方、より年収の高い中流世帯にとっては、無利子か有利子の貸与型奨学金制度を選択することになる。こうした世帯の保護者に対し、久米さんがよく行うアドバイスは教育ローンとの併用法だという。

「近年、奨学金の返済トラブルの報道が過熱したことで、奨学金による子どもへの負担を不安視する保護者の方は非常に多いです。そこで親が教育ローンを借り入れ、奨学金の受給額を下げようとする方がいるのですが、得策ではありません」

 JASSOでは奨学金返済の金利は上限を3%と定めるが、実際はそれよりはるかに低金利なためだ。久米さんは言う。

「JASSOの返済利率は借り終わった時点での数値が適用されます。19年3月では、固定金利で0・14%、変動金利では下限に設定している0・01%でした。さらに今年度から、利率の最下限が0・001%まで引き下げられています。4年後の金利をお約束することはできませんが、基本的に教育ローンより有利です」

 教育ローンの利子は、日本政策金融公庫の国の教育ローンでは1・71%の固定金利だが、銀行系では2~3%、信販会社では3~6%と利率が高まる。久米さんはJASSOの利子がゼロに近いことを指摘したうえ、貸与型奨学金の受給額を最大化し、教育ローンの金額を最小化して、卒業後に親子が協力して返済する形を提案している。

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大学や企業が展開する給付型も検討の価値あり