10年前くらいまでは、取材の場で、もしくは宴席などのプライベートの場でも、芸人が吉本興業の“会社イジリ”もしくは“会社のエライさんいじり”で笑いを取る場面が多々あった。

 エライさんの会見での言い間違い。会社からふられた営業がとんでもない中身だった。果ては宴席でのエライさんのヘベレケぶりなど。あらゆるものを笑いに変えていた。

 今回の騒動で、いくつか岡本社長の会見などを笑いに変えるやりとりは見かけたが、ここ数年は本当にそれが減ったと感じていた。

 イジリは信頼と愛の証。あらゆる芸人から異口同音にそう聞いてきた。イジリが少なくなるということは組織としては、風通しが悪くなっているともいえる。さらには笑いを売る組織としてはなおさらだ。

 今回のことをきっかけに、またアホみたいなイジリが数多く聞かれる状況になってもらいたい。近くで、長く取材してきた者として、それを強く願う。(中西正男)

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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