1回裏、明徳義塾は先頭打者の田窪孝允が左越えに先制ソロ。2番・田山国孝が四球を選び、無死一塁、今度は木下達矢が左越えに2ランを放つ。ファウルフライを落球で命拾いした直後の一発だった。これで3対0。

 さらに1死二、三塁で7番・内村英二郎が左中間に3ラン。なおも攻撃の手を緩めず、先発・徳久雄太をKO。3連打で1死満塁としたあと、4番・清水信任が2番手・倉松丈二の真ん中直球を鋭くとらえ、右翼場外にとどめの満塁本塁打。この回は9安打を集め、一挙12点を挙げた。

 1イニングのサイクル本塁打は、85年の福岡県大会で東筑も記録しているが、1、2、3、4と順番に打ったのは、偶然とはいえ、神がかり的な快挙だった。

 明徳は2回にも木下が左越えに2本目のアーチをかけ、1試合5本塁打の県記録も更新。21対0で5回コールド勝ちした。

 2ランと満塁弾をアシストした田山主将は「過去2試合、序盤に点を取れていなかったので、初回からエンジン全開でいこうと話していた。そのとおりになってうれしい」と会心の結果に満足そうだった。

 だが、高知県内では無敵だった明徳義塾も、同年の甲子園では、2回戦で今江年晶(現楽天)らのPL学園に9点を取られて敗退。上には上があることを思い知らされた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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