親の姿勢を見てみると、子どもに苦労させていると自責の念を持っている親も多いが、その反面、自分の欲望に忠実で子どもにほとんど無関心という親も目立つ。巷で話題になるような教育に熱心な親や子を思うあまり過干渉となる親はほとんど見受けられない。

 親の愛情を確信できない高校生は、その代償を他人、思春期でもあるので特に異性に求めようとして恋愛に走るようになる。この傾向は女子に強く、これで妊娠、高校中退というルートを選ぶこともある。

 幼少期に母親など養育者との愛着がしっかりと形成されず、情緒や対人面に何かしらの問題が起こることを心理学では「愛着障害」と称しているが、高校生の早急な恋愛はまさにその影響なのではないかと考えられる。

■どこにも、誰にもつながらない家庭
「教育困難校」生徒の家庭に多く見られる特徴の1つに、親族や地域と全くと言ってよい程つながっていない点が挙げられる。不安定な生活のために転居を繰り返し自治会などの地域コミュニティに参加したことのない人、親世代やその親の世代から故郷の実家を出てその後親兄弟との音信を全く絶っている人などが親になっている。彼らは「つながり格差社会」の下部、加えて公的援助等の必要な情報も届かない「情報格差社会」の下部にいる人たちである。

 周囲に相談したり頼ったりできる人を見つけ出せず、何かトラブルがあれば家族の自助努力と自己犠牲で何とか凌ごうとする。それで心身ともに無理をして一層厳しい状況に自らを追い込んでしまうケースもある。親も生徒も外の世界に目を向けようとはせず、外の世界からも気にもされず、自分の「家庭」という狭いスペース内に籠っているようにも見える。

<著者プロフィール>
朝比奈なを(あさひな・なを)
教育ジャーナリスト。筑波大学大学院教育研究科修了。公立高校の地歴・公民科教諭として約20年間勤務。早期退職後、大学非常勤講師、公立教育センターでの教育相談、高校生・保護者対象の講演等幅広い教育活動に従事。