「ファームにいた頃の筒香(DeNA)を観たことがあるんだけど、(プロに)入ってきた時の筒香よりも村上の方が上ですね。筒香は内角に140キロくらいの速いボールを投げておけば、まず打たれなかった。村上は速いボールで少し差し込まれているようでも押し込んで打てるでしょう。清宮(日本ハム)も力はあるけど、どちらかというと前でさばくタイプだからどうしても崩されやすい。岩村(明憲)は入ってきた時から押し込めたけど、ちょっとタイプが違う。今までのヤクルトの日本人選手の中でも同じような選手はいないんじゃないですかね」

ーー守備については、まだ苦労している点が多いようですが。

「もうこれは練習するしかないよね。岩村もそうだったけど、試合に出ながらでも特守をする時間を作ってしっかりやること。今はサードとファーストを両方やっているけど、できれば固定してあげた方がいいんじゃないですかね。でも村上を見ているとエラーしてもめげてないように見える。少々のことはバットで取り返す、みたいな気持ちでやることも大事だと思いますよ」

ーー今シーズンはどれくらいの成績が目安になりますかね。

「打率は2割6分、ホームランは最低でも30本は打ってもらいたいですね。これから胸元にぶつけるような速いボールが増えてきた時にどうなるかですね。でもさっきも言いましたけど、得意なところをいかに逃さずに打てるかが大事です。ボールを追いかけると、どうしても形が崩れる。打てるボールは絶対に来ると信じて、それを待つこと。それができれば大きく数字が落ちることはないと思います。あと、どうせ将来的にはクリーンアップを任せる選手なんだから、今から打順もあまり変えずに使ってもらいたいですね」

『リーグを代表する強打者である筒香が入ってきた時よりも上』、『今までのヤクルトの日本人選手の中でもいないタイプ』という言葉に、八重樫氏の村上に対する期待の大きさが強くうかがえた。また村上に対する要望だけでなく、起用法についての話が度々聞かれたのも、『大きく育ってほしい』という八重樫氏の気持ちの表れではないだろうか。後半戦、村上には低迷するチームを浮上させるようなさらなる大活躍に期待したい。(文・西尾典文)

●西尾典文(にしお・のりふみ)/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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