大阪で開催されたG20が閉幕しました。トランプや習近平をはじめ、世界の首脳が一堂に会しました。その会談の模様はニュースでも大きく取り上げられましたが、世界のトップ首脳のスピーチに、上手下手の差はどれほどあるものでしょうか? 日本人ながらニューヨークのスピーチ大会を4連覇し、『20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす』の著者でもあるリップシャッツ信元夏代さんにプロフェッショナルスピーカーの目線でチェックしてもらいました。
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では早速、世界の首脳陣の中から気になるトップたちのスピーチ力を、分析・解説していきましょう。
<カナダ トルドー首相>
言葉を3Dに変える、共感型スピーカー。
プロスピーカーの見地からして、ズバ抜けてうまいのは、ジャスティン・トルド−首相です。
聴衆から共感を瞬時に引き出し、惹き込み、かつ持続させる。さらに一語一語に感情と重みが乗っており、言葉が3Dのように豊かに聞こえます。
パトス(感情)とロゴス(論理)のバランスが非常に良いスピーチです。
たとえばトルド−首相が行ったNYUの卒業式での祝辞スピーチを取ってみても、締めとなるクロージングで、
“Go change the world!”(4語)
「打って出て世界を変えろ」(11字)
と短くインパクトあるフレーズに、感情と重みを思いっきりのせていて、最後まで聞き手の気持ちを高く持続しています。
聞き取りやすいゆっくり目のスピード、簡単簡潔簡明な普段使いの言葉選び、会話調の語り口で、親近感と信頼感を引きだします。
言葉と表情、声の調子があっており、言葉に感情や重みが乗っていいます。
聞き手に与えるメッセージでは、言語よりも、実は表情や声色やしぐさといった非言語メッセージのほうがより大きいという、「メラビアンの法則」があります。
彼の場合は「トルドーの法則」と呼びたいくらい、言葉に感情と重みを乗せるのがうまい。