そしてもうひとつぜひ真似て取りいれてほしいテクニックが「リーセンシー効果」です。


 
 たとえばトルド−首相が大切なものを挙げるのに、

「Acceptance(承認), Respect(敬意), Friendship(友情), and even Love(愛)」

 と一番重要なものを最後に持ってきているのです。

 人は最後に聞いたことを最も重要と捉え、記憶に残る、という傾向があり、これをリーセンシー効果といいます。

 通常は、直前に見た広告が消費者の購買活動に影響を与えるという効果のことを差し、広告業界で使われる用語なのですが、スピーチ構築にも同じことがいえます。
 
 一番刺さってほしい言葉を最後に持ってきて下さい。

<ドイツ メルケル首相>

 自分らしさを確立したロジカルストーリーテラー。

 内容重視型のロゴス(論理)寄りなスタイルでありながら、ユーモアも忘れず、ストーリーも巧みに活用するのが、メルケル首相です。

 今年は、メルケル首相が行ったハーバード大学卒業式でのスピーチも話題になりました。
 
 シリアスながら、ベルリンの壁崩壊時の自分自身のパーソナルストーリーを語るなど、パトス(情緒)への訴えかけも交えており、ストーリーの重要性を熟知しているといえるでしょう。

 さらにベルリンの壁崩壊のストーリーから、最後に「私たちを阻む『壁』を打ち壊そう」(15字)というワンビッグメッセージにつながっています。

 ワンビッグメッセージとは、そのスピーチなりプレゼンなりで最も伝えたい、たったひとつのメッセージのこと。

 このワンビッグメッセージを絞ることが最も重要なポイントです。

メルケル首相はドイツ人らしいロジカル寄りの話術ながらもストーリー使いが巧みで、まさに上級者といえます。

<アメリカ トランプ大統領>

 オレオレスピーカーの代表格。

 常に世界を騒がせるトランプ大統領ですが、スピーチの観点からいうと、かなりマイナス要素があります。

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不必要な手の動きが話の邪魔に