「恋愛をしてきた時期もぐちゃぐちゃにされて、二股とか略奪とか言われて──事実じゃない嘘がどんどん雪だるまみたいに大きくなっていっちゃったなあって」(「MEKURU」VOL.05)

 これは俳優・鈴木浩介との話を指すようだが、彼女は「マンション買わせたとかメール1通で別れたとか言われたときは、人って泣き過ぎると目の下の皮がめくれるぐらい(笑)心から涙が出るんだなってことがわかって」とまでショックをあらわにしている。

 ただ、これ以外にも、岡田准一や大森南朋、石崎ひゅーいら数々の男性と浮名を流しており「恋多き女」であることは間違いない。それがなぜ「魔性の女」に変換されるかというと、さまざまなギャップがそういった想像をかきたてるからだ。

 たとえば、彼女は素朴でナチュラル系の容姿に似合わず、くわえタバコでポルシェを乗り回すような一面も持つ。一事が万事で、こういう女性は案外、恋についても清純派ではないのでは、と勘ぐらせてしまうのだ。また、前出のインタビューでは「自分から好きになるっていうことがあんまりないんですよ。友情と愛情の違いがイマイチわかってなくて」とも語っていた。これなどむしろ、男をその気にさせがちな天然の「魔性」の一種なのではないか。

 さらに、女優はとかく男っぽいといわれる。彼女もまた、あの容姿であの話し方で、手芸やお菓子作りが趣味といいつつ、タバコも車も大好きという二面性を持つ。それはひとえに、女優らしい女優である証明だろう。ひと筋縄ではいかなさそうという意味では、過去にも多くの女優がそうだったように「魔性の女」と呼ばれるのも勲章だといえる。

■魔性系女優の大先輩、大竹しのぶ

 そんな魔性系女優の代表格が、大竹しのぶだ。蒼井はこの大先輩と、2007年の映画「クワイエットルームへようこそ」で共演した。それも、同じ摂食障害(嘔吐タイプ)患者の役だ。大竹の怪演はいうまでもないが、蒼井も7キロ痩せるなどして迫真の演技をした。女優が役作りのために減量をすると、そのまま摂食障害になってしまうケースも珍しくないのだが、彼女はそうならず、メンタルの強さを感じさせたものだ。

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蒼井優の美学