東京大生の支持政党は、1950年代までさかのぼると社会党が強かった。

 1958年 社会党50.1% 自民党10.6%
 1962年 社会党33.5% 民社党9.7%

 60年安保前後の年であり、共産主義社会に理想を求めた学生は少なくなかった。1960年代後半にかけて学生のあいだで反体制意識が高まるようになり、学生運動が盛んな時代を迎えようとしていた。自民党支持という選択肢はむしろ少数派だったといえる。

「この時期、保守政党の自民党は戦前的価値、社会党などの革新政党は戦後的価値と結びつけて理解されていました。農村、旧中間層、高齢者で自民党支持が多く、都市、労働者、若者では社会党支持が顕著でした。当時の東大生の間では自民党支持を口外するのは恥ずかしいという空気が強く、社会党支持が高かったのは当然だと思います。むしろ、学生運動が盛んだったのに共産党支持が低いことが興味深いですね。一般の学生は、それなりに現実的だったのでしょう」(中北さん)

 1970年代半ば、学生運動の時代は終わった。若者の政治離れがいわれるなか、自民党と社会党の支持率が逆転する。

 1979年 自民党20.5% 社会党10.3%
 1982年 自民党22.8% 社会党10.6%  
 1984年 自民党16.3% 社会党12.7%

 当時、東京大助教授の庄司興吉さんはこう解説している。

「社共を中心に野党への頼りなさが増していると言えると思う。それは一つには現政権の政策への個々の対策・代案が目につかないと言うこと。また、それらを綜合して体制を批判する論理がないと言うことだろう。言い換えれば現状維持のための『上からの管理化』に対抗する『下からの総体化』の論理がない―――二十年前はそれが社会主義だったが、様々な要因で社会主義が傷ついた今、それに代わる論理がない―――ということだろう」(東京大学新聞1983年8月9日)

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