■東京五輪まで休まず露出し続ける

 視聴率や興行収入で評価されがちなエンタメ世界において、新境地を開拓するということはたしかに難しいことなのかもしれない。しかし、福山が長年この世界でサバイブし続けてこられたのは「研究熱心な一面があるから」だと語るのはエンタメ情報誌の編集者だ。

「今も主要な週刊誌には目を通し、連ドラや映画のパブ取材でもしっかり時間を取って自ら原稿をチェックする。そもそも自分がどう見られているのか、どう見られたいのかを常に考えていて、だからアーティストとしても俳優としても人気なのだと思います。あと、作品選びも非常にうまい。50歳を迎えた今年に情けない銀行マン役を選んだのもそうですし、今年は平野啓一郎原作の主演映画『マチネの終わりに』の公開が11月に予定されており、来年は岩井俊二の新作『Last Letter』への出演も決まっている。映画俳優としての真価が問われる前に、今回の連ドラで新境地に挑めるというのは、俳優としてとても恵まれていると思いますね。また、前作のオリジナルアルバムから5年が経っていますから、次回作のリリースも噂されている。東京オリンピックまで休みなく露出し続け、福山雅治の名をより轟かせようという戦略がしっかりあるはずです」

 芸能界を戦略立ててサバイブするイケメン智将として、まさに死角ナシの福山雅治。実際に取材経験もあるTVウオッチャーの中村裕一氏は彼の魅力を次のように分析する。

「福山さんをひと言で表すなら『謙虚』そのもの。これだけのキャリアで、しかも人気者であるにも関わらず、自らのことを『中年』と言い切る潔さは、決して嫌味ではなく格好がいい。その一方で、新しい自分を見つけるべくさまざまなことにチャレンジする貪欲さも非常に人間味にあふれており、男性ファンが多いのもうなづけます。インタビューした際、『これからは良いことも悪いことも目の前で起こるすべての出来事を面白がっていきたい』と語っていたのがとても印象的でした。結果を恐れず、自分自身で舵を切ることができ、それでいて多くのファンの心を満たすことができる、今の日本のエンターテイメント界において唯一無二な存在だと思います」

 果たして、福山が50歳で挑んだ新境地はいかなる着地点を見せるのか? 劇中でも走り続ける福山と並走しながら見届けたい。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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