私には組織ごとにスケジュールやアポイント調整してくださるスタッフがいるのですが、彼らは私がピークに忙しい時に豪快に休暇を取ります。


他にも、海外ではレストランやデリバリーでの注文の間違いなどしょっちゅうあります。最初はそこで怒ったりしていましたが、そんなことは何の解決にもならないどころか、怒り方を間違えたら訴訟になりかねません。いや、宗教や文化的背景が違う人に対して日本にいた時のように責めたりしたら、命の危険さえあるかもしれません。
 
 怒っても変わらないし、相手の機嫌を損ねて敵を作るだけだし、何より時間が失われます。

 チキンライスがダックライスになっても、かつ丼が親子丼になっても、来たものをサンキューといって食べた方が時間効率としていいという結論になりました。

 どうしても一言伝えたかったら、帰りに「本当はチキンライスを頼んだんだけどダックライスもおいしかった。気にしないで。でも次はチキンライス食べたいな」と相手の機嫌を損ねない程度に意向を伝えるのです。スケジュール調整なども、怒って嫌われるより、自分でやった方がいいです。

 人間だから、こんなものなのです。

 海外の生活は、相手も完ぺきを求めてこないため、全てはおあいこさま。慣れれば楽です。日本人のくせに私も時間を間違えたり、メールの読み違えしたりとかしょっちゅうです。でも誰も攻めないのです。「そんなもんですよ」と言って皆笑ってくれます。
 
 私のいるシンガポールは熱帯なので、カリカリしていたら脳か心臓がやられます。

 アポイントが多少遅れても、あなたや会社の業績にほとんど影響はありません。あなたに関わる人たちの多少のミスも怒った方が損です。出されたもの食べてれば大丈夫ですよ。
 
 海外では、物凄い高い物件に住んでも、家の中結構がたがたですよ。でも死にはしません。

「態度が悪い」っていう感覚は純ジャパなのでわかりますが、これが海外で最も通用しません。そんなこと言っていたら本当に大変なことになりますよ。
 
 これは海外に限ったことではなく、日本国内は海外のようになっていくと思いますから。何事もいいとこどりはできないし、全ての「長所は短所」だから仕方ありませんが、日本という場所が再び輝きや豊かさを取り戻すには、「リスペクト」と「寛容さ」が必要だと痛感します。「違い」に対するリスペクトと寛容さです。
 
 日本が再び輝くためには社会に多様性を増やしながら、それを活かしていくことが不可欠だと思います。 

 寛容になりましょう。

 人は一人一人違って当たり前なんです。同じ日本人に対してもこうしましょう。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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