ただ、子どもがこうしたことを口に出して聞いてしまうのは、単に経験が少ないからなのです。幼稚園の中に、加齢のせいで髪の毛が薄くなり悩んでいる子なんていないわけです(当然ながら、病気の子どもは例外です)。そのため、「どうして髪の毛が少ないの?」というのは、「どうして木の葉は季節で色が変わるの?」と同じレベルの、「知らないことを知りたい」という好奇心による質問なのです。

 たった数年生きただけの彼らに「そういう理由ならば、こんなことはしないほうがいい」と、言葉でなく心の底から納得してもらうには、まだまだ実践での経験が足りなすぎるのです。

■因果応報という仏教の言葉

 しかし、子どもだろうが大人だろうが、悪いことは悪いこと。勝手に人の自転車を乗って帰ってきたら窃盗だし、動物をいじめたら動物愛護法に違反します。

 そこで役に立つのが、因果応報。「悪いことをすると、その分は自分に返ってくる」という因果応報という仏教の言葉。そして、仏教でいう「地獄」の存在です。

 地獄は、ただ漠然と「悪いことをしてはいけない」と教えるわけではありません。「人の悪口をいってはいけない」「言うと針のむしろで刺されることになる」というように、具体的な行動を挙げて、それぞれに具体的な刑罰を科しています。それが、子どもを注意するのにピッタリなのです。

 子どもには、「悪いことをしてはダメ!」とあいまいに叱るのではなく、「人の悪口を言ったらダメ!」と、自分の行動の中の「いったい、どの点が悪いことなのか?」をしっかり伝えなくては混乱してしまいます。さらに、ぼんやりと「うそをついたらよくない」と思わせるのではなく、「うそをつくと閻魔様(えんまさま)に舌をぬかれる」と思わせていたほうが、そのような行動をしないように注意しようと意識します。加えて、地獄のイラストをみれば完璧。

『いちにちじごく』は、昔の地獄の設定どおりではなく、現代に合わせてアレンジされています。たとえば、「不喜処」という地獄は、「一日中火炎が燃え盛り、燃えた鳥獣に骨の髄まで食べられる」場所で、本来なら「ほら貝などで大きな音をたてて、鳥獣を殺害した」人間がいくそうです。

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基本問題が解けなければ応用問題は解けない