感染症医が教える「甘、辛、塩、苦」の四味に「うまみ」をもたらした「味の素」 (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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感染症医が教える「甘、辛、塩、苦」の四味に「うまみ」をもたらした「味の素」

連載「ワインは毒か、それとも薬か」

岩田健太郎dot.#ヘルス
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』、『ワインは毒か、薬か。』など

スリランカに「鰹節」に似たようなだしがあり、中国では「キノコ」のだしをよく使い、フレンチの「フォン」も動物だしの一種だ(写真:getty images)

スリランカに「鰹節」に似たようなだしがあり、中国では「キノコ」のだしをよく使い、フレンチの「フォン」も動物だしの一種だ(写真:getty images)

ワインは毒か、薬か。

岩田健太郎,石川雅之

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■酸味や苦みを嫌う赤ちゃんにとって母乳はおいしいもの
 
 母乳にはグルタミン酸が豊富で、赤ちゃんはうまみを好むのだという。しかし、赤ちゃんは酸味や苦みを嫌う。おとなになった後飲むと、母乳はさほどおいしいとは思えない。しかし、赤ちゃんにはおいしく感じられる。

 だから、グルタミン酸が豊富で酸味や苦味を抑えたスープは離乳食として赤ちゃんにも好まれる(らしい。赤ちゃん本人に聞いたわけじゃないけれど)。

「だし」は植物や動物、菌類からの抽出物だ。だから本来的には、発酵食品ではない。しかし、1950年ころから発酵を利用した調味料の生産が行われるようになった。

 例えば、グルタミン酸の場合はまず前駆体である2-オクソグルタル酸を発酵生成し、グルタミン酸脱水素酵素でアミノ化して、グルタミン酸を作るという2段発酵法が試みられた。さらにその後、一気にグルタミン酸を作る直接発酵法が開発された。

 こちらのほうが生産効率やコスト面でずっとよい、というわけでこちらが採用されるようになった。現在ではCorynebacterium glutamicumと呼ばれるいかにもグルタミン酸を作りそうな菌が用いられているそうだ。菌の体内で炭素や窒素を用いてグルタミン酸を作っている。

 このような化学的に製造したグルタミン酸ナトリウムには抵抗感も強いらしい。自然の昆布から得られた「うまみ」成分のほうがよいのだという意見は根強い。

 しかし、前述したように、冷静に考えてみれば、このような「化学的に作った」調味料も、実は微生物を用いた発酵によりアミノ酸を作っているわけで、酒やみそ造りと原理的な方法論は何も変わりない。すでに検討したように、化学的に製造したグルタミン酸ナトリウムは(適量を用いた場合は)健康リスクは特に大きくはない。「人工」という記号を忌み嫌う態度は理性的とはいえない。

 ちなみに、鰹節は鰹にカビづけして作られた発酵食品で、その間に乾燥や成形といった複雑な工程が加わる。使われるカビはAspergillus katsuobushiなどだ。


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岩田健太郎

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

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