新しい年度がスタートし、新入社員の初々しい姿が街にあふれるこの季節、桜の花色に誘われるように初心を思い出し、新たな目標を立てた人も多いだろう。
だが、その志が続く人は少ないようだ。これまで、日本人は「勤勉」で「仕事熱心」だと世界中から思われてきた。いや、日本人自身もそう思ってきたはずだ。ところが、近年の調査では、そのようなイメージをくつがえすような結果が次々と出ている。
米国の調査会社ギャラップによると、日本人で「仕事に主体的に取り組む人」は全体のわずか6%。世界139カ国中で132位で、仕事への熱意は世界最低レベルだ。やる気のない社員は71%にのぼり、周囲に不平不満をまき散らしている社員も23%いた。
元号が「平成」に変わる前年の1988年、日本では栄養ドリンク「リゲイン」が発売されて「24時間、戦えますか」のフレーズが一世風靡した。仕事に全人生をかける会社員は、もはや遠い昔の話だ。
もちろん、モーレツサラリーマンに代表される昭和的価値観だけが人生なわけではない。IT技術が発達した21世紀の社会で、朝から晩まで会社で働き詰めるなど、時代遅れでしかない。得たい情報があれば手軽に入手でき、会いたい人がいればSNSで気軽につながることもできる。同僚や上司と“ノミニケーション”をしながら仕事の極意を教えてもらわなくても、学ぶ機会はあふれている。だが、今の日本人が情報化社会を十分に活用できているかというと、心もとない。
リクルートワークス研究所が全国の15歳以上の約5万人を対象に実施した調査によると、2017年の1年間で仕事に関わる自己学習をした人は、全回答者のうち33.1%しかいなかった。設問でたずねた「自己学習」とは、「本を読む」「詳しい人に話を聞く」といった手軽なものも含まれていたが、3分の2の人が「何もしていない」ことになる。同研究所の萩原牧子主任研究員は、こう話す。
「年齢別では、20代前半の約4割が自己学習をしていますが、年齢を重ねるとともに徐々に下がり、40代で約3割になります。学ばない理由について『転職や独立を予定していない』(17.2%)や『仕事や育児で忙しい』(15.0%)を大きく引き離して、51.2%の人が『あてはまるものはない』と回答しています。日本人の多くは、そもそも聞かれても特段の理由はないくらい、学ばないことを普通だと感じているのかもしれません」