2006年に出した前作『天才になりたい』を加筆修正して、2018年7月に出された山里亮太著『天才はあきらめた』。13万部突破を記念して紀伊国屋書店新宿本店で行われた、山里亮太さんと編集担当・大坂温子の対談の様子をリポート。「あきらめた」ことがここ10年で一番の成長と語る山里さんは、どんな思いで執筆に取り組んだのでしょうか。
* * *
■周囲に引かれるくらい本音を散りばめた
山里(以下「山」):『天才になりたい』もいい本だと思うんですけど、あまり売れなかったみたいで。あまりにも書店で見かけないなと思っていたら、やっと見つけたブックオフで、10円で売られていて衝撃を受けました。でも、2017年に大坂さんに声をかけていただいたんですよね。「『天才になりたい』をこのまま死なせておくわけにはいきません」って。僕その時、初めて気づいたんですよ。「『天才になりたい』って死んでたんだ」って。
大坂(以下「大」):『天才になりたい』も、3万部くらいは売れてるんですよ(笑)。
山:そうなんですか、それはよかった。たぶんうちの母親が1万2000部買ってますけどね(笑)。実家にいっぱいあるんで。まあそれで、今のみんなにぜひ読んでほしい本ということでお声がけいただきまして、加筆修正して13万部というありがたい数字になったんです。よかったです、よみがえらせてくれて。死んでたんです、確かに。
大:おかげ様で13万部。どうしてこんなに売れたと思いますか?
山:みんな、嫉妬とかするじゃないですか。そういう部分が共感を呼んだのか……。または、「下には下がいる」と思ってもらえたとか。「自分が人間として最低だなと思っていたけど、もっと最低なヤツいるじゃん」って。読んだ方に、「むしろ今、めちゃくちゃがんばるチャンスなんだなって思える」と言ってもらうなど、いい本を書いたなと思っています。反対に、編集の方の考えとしてはどうなんですか?
大:私の考えとしては、山里さんがありのままをさらけ出してくれて、それに共感した人が多いんじゃないかなと。
山:よく言われるのが、「そこまで書いてよかったんですか」ということ。そう言われて初めて、「そこまで書いたらいけなかったんだ~」と思いました。最初に原稿を直した時に、僕は全部実名で書いちゃっていたんですよ。さすがにそれはやめましょうということになって。だから、僕の嫌いな人を全部、大坂さんは知っているんですよね。
■ほとんど前作の原形をとどめていない
大:ご依頼を差し上げた時は、どういう気持ちでした?
山:そんなことできんの!?って。「『天才になりたい』はもうこれ以上は刷りませんよ」と言われていたし、本は1回出たらそこで終わりなんだと思っていました。でも2006年に出した本ですから、そこからの方が芸人人生は長いし、加えたいこともある。今だからこそ言えることとか、書き直したい部分もありました。自分でも前作を読みながら、「この部分は気取って書いているけど、こんなきれいな話じゃないな」とか、違和感を覚えていたので、シンプルにうれしかったですね。