今年の選抜高校野球は23日に開幕 (c)朝日新聞社
今年の選抜高校野球は23日に開幕 (c)朝日新聞社

 23日に第91回選抜高等学校野球大会が幕を開け、今年はどんなドラマが生まれるか楽しみではあるが、懐かしい高校野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「平成甲子園センバツ高校野球B級ニュース事件簿」(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、過去の選抜高等学校野球大会で起こった“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「初勝利編」だ。

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 創部から3年目、実質1年10カ月という早さで甲子園出場をはたしたのが、1993年の東筑紫学園。

 戦前に筑紫洋裁女学院として開校した女子校だが、89年に男女共学になり、91年創部の野球部もゼロからのスタート。エース・真木将樹(元近鉄-巨人)をはじめとする1期生は、1年のときから試合に出場し、練習試合を含めて年間約100試合の実戦経験を積むことによって、大きく成長。そして、前年秋の九州大会で4強入りし、見事センバツ切符をつかみ取った。

 初戦(2回戦)の相手、三重海星は春こそ初出場だが、夏の甲子園に7回出場(当時)している名門で、プロ注目左腕・広田庄司(元ダイエー)を擁する強敵だった。

 4回まで無安打に抑えられた東筑紫学園は5回、四球と梅田芳宏のチーム初安打となる左前安打でチャンスをつくり、真木の右前タイムリーで先制。6回にも片岡秀太の左前タイムリーで2点をリードした。

 8回に1点を返されたが、9回の海星の攻撃も2死。あと1人で甲子園初勝利だった。

 ところが、ここで真木が突然制球を乱し、2死二塁から3者連続四球で押し出し同点。これまでにも9回になると、四球を連発してピンチを招く場面が多いことから、“真木劇場”と呼ばれた悪い癖が甲子園の大舞台でも出てしまった。年明け早々、右足首を脱臼骨折し、2月上旬までギプスをしていた影響もあったのかもしれない。

 だが、なおも満塁のピンチを投ゴロで切り抜け、試合は延長戦に。そして、10回裏、中村光宏の劇的な左越えサヨナラ2ランで史上最速の初勝利を挙げた。

 勢いに乗った東筑紫学園は3回戦で優勝候補の常総学院を6対4で下し、ベスト8入りをはたしている。

 その後、04年に創部3年目の済美が史上最速V。11年には創志学園が創部の翌春、オール1年生のチームで史上最速出場を果たしたが、北海に1対2と惜敗。史上最速初勝利の記録を更新することはできなかった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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