そして、「出るのがプレッシャーだった時期もあった」(関口清治監督)という苦難を乗り越えて掴んだ3年ぶり3度目のセンバツ切符。悲願の初勝利をかけて臨んだ初戦(2回戦)の安田学園戦だったが、0対0の4回に2年生右腕・松本裕樹(ソフトバンク)が先制2ランを浴びてしまう。

 だが、その裏、1死二、三塁から豊田祥之の中前タイムリーで同点。8回には3番・望月直也の左越えソロで3対2と勝ち越した。

 ところが、勝利まであと1人の9回2死から長打で追いつかれ、試合は振り出しに……。そんな嫌なムードを吹き飛ばしたのが、9回途中の投手交代に際してセカンドに入ったばかりの斎藤塁だった。

 9回裏、先頭打者として右前安打で出塁すると、犠打と安打で三進。吉田嵐のショート内野安打でサヨナラのホームを踏んだ瞬間、10度目の挑戦にして初白星が実現した。

 95年夏の初出場時の捕手だった関口監督は「もっと早く勝っていればよかったですが、節目の10回目。気合が入ったというか、思いが通じての勝利だと思います」と感無量。歴史的1勝は、東日本大震災の直後に亡くなった父への贈り物にもなった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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