だが、経済の面では逆転する可能性が高い。物価下落の時期が終わり、稀少金属やエネルギー・食糧などが値上がりするだろう。

 20世紀になってから100年余、世界経済では30年の中で、国際物価は下落、ジリ高、急騰の三つを繰り返して来た。最近では1970年代が急騰、80年代がジリ高、90年代が下落である。

 現実的な予測でも、2010年までには国際物価が急騰するようなことがあってもおかしくない。中国などの工業化は、90年代には工業品供給力の拡大となって「大競争時代(メガコンペティション・エイジ)」を生み出したが、2000年代のうちには、世界の資源需要を膨張させる、と見られるからだ。

■日本は倫理と美意識を変えられるか

 そんな中で、日本では三つのことが確実に進む。

 第一は少子高齢化だ。平成30年には「団塊の世代」は60歳代後半の高齢者となり、その子供たちの「団塊ジュニア」も40歳代に入る。本編主人公の木下和夫とその父昭夫は「団塊とその子」だ。

 第二は地方の過疎化。もしその時までに日本が首都機能の移転をしていなければ、中山間地は凄まじい衰退に陥っているだろう。東京で営まれる官僚機構は、現在も将来も、東京一極集中の仕組みを保つだろう。

 第三は、知価社会化、様々な新産業と新製品が出現し、創業と閉業が増加しているに違いない。本編にも新しいビジネス・モデルを10以上も入れ込んだが、そのうちのいくつかは現実となっているだろう。それに伴って日本でも、改革は行われるだろう。だが、それが「盲腸の手術」に終わる可能性は高い。「何もしなかった日本」への道である。

■仕方から考え方へ――改革は進むか

 企業であれ国家であれ、組織が行き詰まり、事業の成績や評判が急落すると、改革改善の声が上がるのは当然だ。だが、それは、人事・仕方・仕掛け・仕組みの順で進み、根本の考え方、つまり倫理や美意識の転換に至るまでには、長い時間と幾度もの試行錯誤を経る。

 平成の日本もその通りのことをして来た。まず自民党内閣から7党1会派連立の内閣に代える人事の刷新をやってみた。橋本「六大改革」では仕方を幅広く変えた。小渕内閣は金融再生や会社法の改正で経済社会の仕掛けを変改した。これは一時日本経済を回復させる効果を上げたが、次の森・小泉内閣では難渋する。

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平成の日本では改革が常習化…その理由は