しかし、ご存じの通り世の中はそんなに甘くありません。部下の人たちがモチベーション高く能動的に成果を出すまでには、たくさんの失敗を積み重ねることが必要となるのが世の常です。

 ですから辛抱強く部下に機会を与えること、そして失敗を受け入れ成功への舞台を作ってあげることしかないと思います。

 しかし、失敗を受け入れるには、失敗を会社のために致命的にしない仕掛けが必要です。

 まず、部下に機会を与える。そして、部下の失敗によって起こりうる、どんなトラブルにも対処できるようなシナリオを、リーダーが事前にしっかり準備しておくのです。

 まずは失敗しても組織にとって致命的にはならない事案からどんどん任せていきましょう。部下の失敗を怖がり舞台を作ることを怠っていると、どんどん自分で仕事を抱え込んでしまい、部下は全く成長しないうえ、モチベーションも低下するばかりで悪循環に陥ってしまいます。

 常にバックアップを用意して、組織のダメージを防ぎながら部下に成長してもらう。これは言うのは簡単ですが、大変忍耐力のいることです。しかし、任せながらバックアップを用意することはあなたの能力を格段に成長させます。同時に、部下から見て信頼や尊敬の念を増してもらうチャンスにもなるのです。

 こう言えるのも、私も失敗体験を無限にしてきたからです。顕著な例は、失敗を許さずに部下を叱責しまったこと。チャンスを与えず自分で仕事を抱え込んでしまい、私自身がストレスで参ったのみならず、部下はモチベーションをなくしてしまったこと。そういうことを、実は今でもやってしまっています。

 細かいテクニックでいえば、指示待ちの人には、何度も同じ質問を許さないこと。そうした質問を認めてしまうと、指示待ちの人は永遠に質問ばかりしてくる可能性があります。「まずはやってみてください。それを見てこちらがまた判断して、指示をします」というように言うことが大切だと思います。

 まずは行動してもらうこと。そういう癖ををつけていくことがとても大事です。

 世界中で多くのリーダーが、昔から非常に苦労している問題です。自分だけが苦労していると思わず、まずは楽になって戦略的に準備して任せていきましょう。

 大丈夫です。

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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