一方、日本ラグビー界の事情に精通していた日本代表の前ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏が2012年3月に最初に選考した日本代表で、外国人選手は日本国籍取得前のリーチ1人だけ。そこから2015年のワールドカップまでの4年間に、どうしても日本人選手では担い切れないポジションを中心に少しずつ海外出身選手を起用し、最終的に2011年に続いて10人の海外出身選手を選んだが、4年前のような異論は聞かれなかった。

 海外出身選手のプレーを間近で見て良く知るラグビーファンは、生まれや国籍を気にすることなく、日本代表として戦う彼らを応援している。しかし、ラグビーファン以外からは、長く「なぜ日本代表に外国人選手がいるのか」という疑問や反発が起きていた。ワールドカップの度にラグビーライターがラグビーの代表選手資格の規定を説く記事やコラムを書いても、それはしょせんラグビー界という狭い村社会の中の理屈。一般社会には理解は広がらなかった。

 そんな社会の風潮を大きく変えたのが、2015年の南ア戦勝利だった。世界のラグビー史のみならず、世界のスポーツ史に残る大番狂わせに、ラグビーには無縁だったテレビの情報番組などもこぞって日本代表選手を取り上げた。流ちょうな関西弁で受け答えし、すっかり関西人のトンプソンの姿。あるいは、全く注目されることがなかった関西大学Bリーグ(2部)への留学で来日し、ワールドカップ開幕9カ月前に股関節脱臼骨折の重傷を負いながら日本人の妻に支えられてリハビリに励んで本番に間に合わせたアマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)の苦労話──。これまで「ガイジン選手」とひとくくりにされていた海外出身選手一人ひとりの人間としてのエピソードが伝えられたことで、日本のために戦う海外出身選手の存在は、ラグビー以外のスポーツファンや日本社会にも広く受け入れられるようになった。

 日本で開催される今年のワールドカップの開幕まで200日を切った。様々なバックグラウンドを持つ選手が集まり、人種や国籍も超えて日本のために戦う日本代表の姿は、スポーツ界におけるダイバーシティー(多様性)の先駆者として再び注目されることだろう。