それに加え、日本人DFのレベルも着実に上がっているのも重要なポイントである。先駆者の川島はこんな見解を示していた。

「日本人選手の質が上がって、フィジカル的にも通用するようになり、リーグアンでも十分戦えるようになったのは事実だと思います。宏樹や源に関して言えば『自分たちはやれる』という自信を持っているのが大きい。宏樹ならドイツ・ブンデスリーガで4シーズンを戦った実績があるし、源にしても鹿島時代にFIFAクラブワールドカップに参戦したリ、ロシアワールドカップも経験して世界トップレベルをよく理解している。そこは間違いなくアドバンテージだと思います」

 川島が言うように、現在の酒井と昌子は読みや駆け引きの鋭さ、献身的な走りやアップダウンの繰り返しといったストロングポイントを要所要所で発揮している。ただ、彼らと言えども最初から完璧に適応できていたわけではない。酒井は「フランス1年目は散々だった。対峙した相手にやられて、自分のところから失点することもあった」とアジャストするまでに時間がかかったことを打ち明けている。

 2カ月前に新天地に赴いたばかりの昌子はより難しさを感じる日々だ。顕著な例が、3月3日のリヨン戦だろう。フランス中堅クラブのトゥールーズは、UEFAチャンピオンズリーグでバルセロナと互角の戦いを見せている強豪に圧倒的に攻め込まれ、大量5失点を喫した。昌子自身も進境著しい23歳のフランス人FWムサ・デンベレに振り切られ、4点目を献上している。

「デンベレ選手に抜かれた時、味方が自分と並行して走っていたけど、カバーがなかった。日本は『チャレンジ&カバー』が基本だけど、こっちは『チャレンジ・オンリー』(苦笑)。その価値観は全然違いますね。

 フランスではスライディングに対する考え方も大きく異なります。飛び込んで抜かれたら失点に直結するんで、日本では『スライディングは最終手段』と教わってきたけど、こっちでは『抜いた方がうまい』という見方をする。だから、DFはスライディングをファーストチョイスだと考えているんです。自分もデンベレ選手についていったシーンで最初にスライディングに行っていたらボールを取れていたかもしれない。そういうところは学んでいかないといけないと思います」と本人は神妙な面持ちで言う。

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他国で活躍する日本勢の存在も追い風に