しかし、納得がいかない星野監督は、なおもセリーグに再調査を要請。これを受けて、セリーグ・川島廣守会長は「相手監督に礼を失してはいけない」と松原コーチを注意し、ようやく騒動の幕引きとなった。

 度重なる相手有利の判定に堪忍袋の緒を切らした星野監督が、試合後にベンチ裏で審判を暴行するという前代未聞の事件を起こしたのが、1996年9月20日の巨人戦(東京ドーム)。

 1点を追う中日は7回、パウエルがショートへ内野安打性のゴロを放ったが、上本孝一一塁塁審の判定は「アウト!」。

 さらに4対4で迎えた延長10回、中日は2死満塁のチャンスも、代打・彦野利勝が1ストライクからバットを止めた動作を上本塁審にスイングを取られ、直後三振で無得点。その裏、巨人は無死満塁から代打・後藤孝志の犠飛でサヨナラ勝ちした。

 事件が起きたのは試合終了直後だった。ベンチ裏通路で上本塁審を待ち伏せしていた星野監督は「アホウ、誰に頼まれたんや。この期に及んで汚いぞ。公平にやれ!」と面罵した。さらに田中俊幸審判が止めに入ると、蹴りを二発食らわせるなど大暴れ。

 同年は開幕以来、巨人戦で判定トラブルが相次ぎ、星野監督は「巨人はお上に守られている」「巨人にはボークもないんだな」などと審判に対する不信をあらわにしていた。これらが積もり積もって、逆転Vへの最後の望みをかけた3連戦初戦で一気に爆発してしまったようだ。

 その後、セリーグから厳重戒告と制裁金100万円の処分を受けたが、「こっちの言い分は何も聞いてないじゃないか。確かにオレが悪かったかもしれんが、お互い話をしてジャッジする問題。それもみんなも前でやればいいんだ」と反論。これには長嶋茂雄監督も「命がけで戦っているんですから、仙ちゃんの気持ちもわかる」と同情的だった。

 闘将の退場劇がナインの闘志に火をつけ、奇跡の大逆転劇が演じられたのが1996年5月26日の横浜戦(横浜)。

 事件は1対6とリードされた7回に起きた、1死一塁で三振に倒れたコールズがストライク、ボールの判定に不満を抱き、杉永政信球審に暴言を吐いて退場を宣告されたのが発端だった。

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“星野効果”でチームは大逆転