そして、判定に納得していなかった星野監督の怒りも爆発する。杉永球審がつけていたピンマイクを奪い取ると、「そんな失敗(誤審)ばかりしていたら、バカヤローって言うぞ。バカヤロー!」と叫んだ。かくして、コールズ同様、暴言で退場処分になってしまった。

「別に演技してたわけじゃない」という星野監督だが、結果的にこの“バカヤロー退場劇”がナインを奮起させた。

 島野育夫ヘッドコーチが代行として指揮をとり、8回に2点を返すと、9回にも“大魔神”佐々木主浩に襲いかかり、3安打を集中してたちまち1点差。さらに1死二、三塁から動揺した佐々木の暴投で6対6の同点に追いつくと、とどめは大豊泰昭が右越えに決勝2ラン。その裏、中山裕章が横浜の反撃を1点に抑え、8対7で逃げ切った。

 5点差をつけられ敗色ムード濃厚から退場劇を境に怒涛の猛反撃で大逆転。まさに“星野効果”とも言うべき鮮やかな勝利だった。

 試合後、星野監督は「これ(退場劇)で選手がひとつになったと言えば、審判に失礼だよ」と言いつつも、「でも、選手は自信がついただろう」と最後は“星野スマイル"で締めくくった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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