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ボクシング「男・山根」の快進撃がバラエティ番組で続く理由

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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パワハラ問題で渦中にいた山根明元ボクシング連盟会長が今やバラエティ番組で引っ張りダコ (c)朝日新聞社

パワハラ問題で渦中にいた山根明元ボクシング連盟会長が今やバラエティ番組で引っ張りダコ (c)朝日新聞社

 この年末年始にやたらとテレビで見る機会が多かったのが、日本ボクシング連盟前会長の「男・山根」こと山根明である。アマチュアボクシング界で絶大な権力を誇っていた彼は、助成金の不正流用や試合の判定への介入などの疑惑を告発され、昨年8月に会長を辞任した。

 そんな彼が年末年始には数多くの番組に出ていた。例えば、12月25日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)では、MCの加藤浩次と対面してインタビューに応じていた。会長職を辞任したことでプレッシャーから逃れて、今は幸せだと語った。

 2018年の出来事を振り返るという企画で、ZOZOの前澤友作社長が月旅行に出るというニュースについて、加藤に「(月に)行きたいですか?」と尋ねられて、「男・山根、よろしくお願いします!」と猛アピール。月でやりたいことを聞かれると「浮いたままでシャドーしたい」と答えて加藤を爆笑させた。最後に2018年を総括する言葉を何でもいいので一筆書いてほしいと求められ、山根が筆で書いたのは「男 山根」の3文字。最後までサービス精神旺盛だった。

 12月30日放送の『朝まであらびき団SP あら-1グランプリ2018』(TBS系)では、芸人たちに混じって「あらびきパフォーマー」としてVTR出演。ボクシングのグローブを身に着けて直立した状態で、カメラに向かって演説をした。

 すると、その途中でふーみんという芸人が割って入ってきた。彼は山根に対して「なめとるやつには、ケツの穴から指突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせ節」と歌いながら挑発をした。すると、山根は不機嫌そうな顔で「やってみい!」と一喝。VTRを見ていた東野幸治、藤井隆、指原莉乃は絶句しながらも大笑いしていた。ふーみんは「一生のトラウマになった」とコメントを残していた。

 12月30日放送の『うわっ!ダマされた大賞2018』(日本テレビ系)では、デヴィ夫人と共にドッキリ企画の仕掛け人として参加。収録中に怒るふりをするドッキリでは、リアルな演技でじゅんいちダビッドソンやダイアンを凍りつかせた。また、ヒロシに対しては、引っ掛ける設定で実は引っ掛けられているという「逆ドッキリ」を初体験。スタッフの不手際でヒロシが大怪我をしたのではないかと思い込み、彼を抱きかかえてスタッフに説明を求める優しい一面を見せていた。

 それ以外にも、『連笑 10人連続で笑わせろ!』、『全力!脱力タイムズSP』(共にフジテレビ系)、『ビートたけしの独立してマージン分ギャラ下げるからあと2回ヤラせてTV』(TBS系)など、もはや数え切れないほど多くの番組に出演している。今なぜこんなに引っ張りだこになっているのだろうか。

 山根がバラエティ番組に進出するきっかけになったのは、11月13日放送のビートたけしの特番『いきなり、たけしです。』(テレビ東京系)に出演したことだろう。たけしがさまざまな質問を投げかけたところ、山根はそのすべてにズバリ回答。最後には初体験の年齢まで告白していた。

 これが放送されて、たけしという大物のお墨付きが与えられたことで、バラエティ界全体でも「解禁」というムードになったのだろう。この時期から徐々に番組の企画、出演交渉、収録などが始まったと考えると、山根が実際に立て続けにテレビに出始めたのがちょうど年末ぐらいになるというのも納得がいく。

「疑惑の渦中にある人物をバラエティに出すのはけしからん」という声もありそうだが、逆に考えてみてほしい。そもそもバラエティに出る「資格」とは何だろうか。バラエティに出ていい人と出てはいけない人はどうやって決めるのだろうか。

 そもそもバラエティ番組とは「何でもあり」のジャンルだ。そこに出るための専門家というのは存在しない。芸人もモデルも俳優も、バラエティ番組に出ることが本職であるわけではない。バラエティに出ることを職業とする人がいるわけではなく、誰でも出られる受け皿の広さこそがバラエティ番組の魅力でもあるのだ。

 山根は全国的に名前とキャラクターが知れ渡っているので、起用する側としてはそれを前提にして企画を立てやすいし、扱いやすい。自由にしゃべらせると意外と愛嬌もかわいげもあって、そこがバラエティ映えする。「男・山根」の快進撃はしばらく続きそうだ。(ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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