「勤め先の店主に『姓が変わるので届けを出したい』って言ったんです。『え~、結婚するの?』って言われて。一緒に暮らしていることは知っていたから、『相手はその人? じゃあ、よかった!』って(笑)。再婚なので、仕事で使っている名前は通称名、本名は別にあって……。で、今度は“藤本”に変わるので、『ややこしいよ~!』って言われましたけど(笑)」

 再婚にありがちなエピソードを面白おかしく話してくれる三恵さんだが、すべて円満というわけではない。再婚同士の結婚、それぞれの子どもの存在。特に康弘さんは少しだけ複雑だ。

「僕には子どもが3人います。3人とも30歳を過ぎた大人ですから、僕たちのことも理解はしてくれていると思いますが……。お互いの子どもたちを呼んで、食事会をしたのですが、理解してくれていると思っていた長男は現れず、つれなかった次男が喜んで来てくれたり。こんな父親ですから、理解してほしいというのは厚かましいですが、子どもの気持ちは本当のところはわかりません」

■2人ともいのしし年で走り出したら止まらない

「彼女と僕はひと回り違う12歳差。そしてともに干支はいのしし。走り出すと止まらないんです(笑)。そういえば、来年はいのしし年! 72歳の年男と60歳の年女ですね!」

 グループで遊びに行っても、いちばん年上になってしまう、と言う康弘さんだが、チャレンジ精神に溢れ、肉体的にも年齢を感じさせない。三恵さんはそんな康弘さんを頼もしく思っているはずだ。

「『結婚(入籍)なんてどっちでもいいからね』とずっと彼女は言っていたんですが、いざ入籍したら、嬉しそうでした。女性ってそういうもんなんですかね?」

 そう言う康弘さんも、少し照れながら嬉しそうに笑っていた。

(取材・文/時政美由紀)

時政美由紀(ときまさみゆき)
(株)マッチボックス代表。出版社勤務後、フリー編集者に。暮らし、食、健康などの実用書の企画、編集を多数手がけている