鹿島は準々決勝のグアダラハラ戦で序盤にいきなり失点し、それ以後も北中米カリブ海王者のテクニカルな攻撃に後手に回ったが、後半に入ってからは前からのプレスを自重し、ブロックをベースにした守備に切り替えて相手の勢いを削ぎ、逆転勝利につなげた。しかし、レアル・マドリードはグアダラハラ戦の後半のような守り方だと、逆に前線がグアダラハラにはなかったパワーを発揮し、超攻撃的なブラジル代表サイドバックのマルセロなども果敢に攻め上がってくることが予想されるため、鹿島はある程度勇敢に前から守る必要があるかもしれない。

 また、レアル・マドリードはソラーリ監督になってから攻守のバランスが改善され、前線、中盤、最終ラインが組織的に機能している。その中でスペイン代表DFセルヒオ・ラモスとロシアW杯でフランス代表の優勝を支えたDFラファエル・バランという世界最強クラスのセンターバック・コンビとベルギー代表GKティボー・クルトワが難攻不落のトライアングルを構築している。中盤の底で攻守の要となるMFカゼミロは負傷明けだが、代役のMFマルコス・ジョレンテがリーグ戦で好調であり、大きな弱点にはなりそうにない。

 グアダラハラ戦で貴重な3点目のゴールを決めた19歳の安部裕葵は「もちろん格上っていうことで、我慢する時間は長いと思いますけど、我慢するのは日本で一番得意なチームだと思う」と語る。厳しい戦いになることは分かり切っている中で、いかに耐えるところを耐え、良い時間帯を見いだしてそこで勝機をつかめるか。もし勝利できれば、それは開催国として明らかなホームアドバンテージがあった“前回のリベンジ”というレベルではない国際評価につながるだけに、鹿島の大いなるチャレンジに期待したいところだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の“天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。