■寝返り防止クッションをおすすめできない理由

 確かに、寝返りをはじめた頃の赤ちゃんは、いつ寝返ってしまうかヒヤヒヤするものです。不意の寝返りを防ぐためのクッションも市販されていますが、使用はおすすめしません。アメリカでは2010年までの13年間に、寝返り防止クッションによる窒息が原因で亡くなったと考えられる1~4カ月の赤ちゃんが12人いると発表されています。アメリカ食品医薬品局は現在、このようなクッションの使用をやめるよう呼びかけています。

 うつぶせ寝がいつから安全なのかはわかっておらず、仰向けでいられるに越したことはありません。その上で、仰向けに戻してもすぐうつ伏せになってしまう子は、寝つくまで呼吸を見守り、寝ついた後にそっと仰向けに戻してあげるのも一つの手だと思います。そして、両方向にスムーズに寝返りができるようになった赤ちゃんは、仰向けに戻さなくても良いかもしれません。

 ママ・パパができることは、万が一寝返りをしてしまってもリスクが最小限になるよう、布団まわりに何も置かないことです。

■ベビーベッドには何も入れないほうが安全

 欧米では、ブランケットや枕などを何も入れないベビーベッドに寝かせるのが最も安全と言われています。ベビーベッドを導入していないご家庭でも、敷布団は赤ちゃん用の硬いマットレスにシーツをぴったりと敷いて利用し、枕やブランケット、掛け布団は使わないのがおすすめです。低月齢の赤ちゃんはおくるみでくるんだり、おくるみを卒業した赤ちゃんは、スリーパーという着るタイプの毛布を着せて寝かせるのがおすすめです。掛け布団なしでは寒いのではと思われるかもしれませんが、室温や服装、スリーパーの厚さで調節しましょう。暑すぎる環境もSIDSのリスクと言われていますので、少し涼しいくらいで大丈夫です。

 寝かせるときは必ず仰向けにすることは非常に大切ですが、ママ・パパが寝入った後にうつ伏せになってしまったら、仰向けに戻してあげることはできません。寝ている間ずっと監視しているのは不可能ですから、できるだけ安全な環境を整えることが大切です。寒くなってきてお布団や毛布など寝具が多くなりがちな時期ですが、睡眠環境をもう一度見直してみてくださいね。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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