掛布が見せた「武士の情け」、最強助っ人の“棚ぼた達成”…サイクル安打をめぐる珍ドラマ (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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掛布が見せた「武士の情け」、最強助っ人の“棚ぼた達成”…サイクル安打をめぐる珍ドラマ

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久保田龍雄dot.
元横浜ベイスターズのローズ (c)朝日新聞社

元横浜ベイスターズのローズ (c)朝日新聞社

「三塁ベースを踏むな!」。スタンドのファンからこんな不思議なアドバイス(?)を受けたのが、堀幸一(ロッテ)。

 1990年9月2日の日本ハム戦(東京ドーム)、初回に先制の先頭打者本塁打を放った堀は、第2打席で中前安打、第3打席で右越え三塁打、第4打席で右前安打と4打席連続安打。あと二塁打が出れば、サイクル達成である。

 そして、9回に運命の5打席目が回ってきた。ベンチのナインは「絶対やれよ!」と声を揃えて送り出し、本人いわく「審判員にも励まされてたんです」とのこと。

 サイクルを期待するスタンドのファンの声援を背に、堀は武田一浩からレフトに鋭い打球をかっ飛ばした。二塁打ならもちろんサイクルである。

 ところが、レフト・平井光親の頭上を越えた打球は、そのままグングン伸びて左翼席へ。なんと、本塁打になってしまった……。

 冒頭のファンの声は、「三塁ベースを踏み忘れてアウトになれば、二塁打になるぞ」という意味だ。

 だが、プロ3年目でレギュラー獲りに必死の堀は「サイクルを逃したのは残念だったけど、大体が左投手専門だったでしょ。右(投手)からの本塁打だったから(踏み忘れはしなかった)」とコメント。記録よりも、「右投手でも打てる」と首脳陣にアピールすることと、1点でも多く取ってチームの勝利に貢献するほうを選んだわけだ。5打数5安打3打点2本塁打1三塁打の大当たりを、「こんなに打っていいのかなと思いましたよ」と素直に喜んだ堀は、翌91年からレギュラー定着をはたした。

 サイクル安打を達成するには、山本浩二の例を挙げるまでもなく、三塁打が一番難しい。今年5月22日のオリックスvs楽天(楽天生命パーク)でも、吉田正尚が三塁に到達しながら、送球間の進塁だったために二塁打となり、“幻のサイクル”に終わっている。

 ところが、「あと三塁打が出ればサイクル達成」という最も困難な条件を2度にわたってクリアした男がいるから、野球は奥が深い。



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