男の名はローズ。1993年から横浜で8年間プレーし、首位打者1回、打点王2回、最多安打2回に輝いた横浜ベイスターズ最強の助っ人である。

 ローズが初めてサイクル安打を達成したのは、95年5月2日の中日戦(横浜)。1回にセンター・パウエルが打球を見失うという幸運な安打でスタートを切ると、3回と5回に二塁打、7回に本塁打を記録し、残るは三塁打のみとなった。

 そして迎えた8回の5打席目は、左翼フェンス近くまで伸びる大飛球となったが、なんと、打球を追っていたホールが勢い余って転倒するアクシデント。この間に三塁を陥れた。最初の安打と最後の三塁打は棚ぼたとあって、「うれしいけどラッキーだったな」の言葉にも実感がこもっていた。

 2度目のサイクルは、97年4月29日のヤクルト戦(横浜)。初回に右越えの先制2ランで弾みをつけると、3回に中越え二塁打、4、6回に安打と前回同様4打席連続安打を記録。またしても、残るは三塁打のみとなった。

 そして8回1死、山本樹から中越えに三塁打を放ち、藤村富美男(阪神)、松永浩美(オリックス)に次いで史上3人目のサイクル2度を達成した。

 だが、話はこれだけでは終わらなかった。99年6月30日の広島戦(富山)、ローズは第1打席から二塁打、四球、安打、三塁打を記録し、本塁打を残してサイクルにリーチをかけると、6回無死一、三塁、小林幹英の144キロを左中間席最深部に運び、プロ野球史上初、世界タイとなる3度目のサイクル安打を達成した。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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