千原ジュニア (c)朝日新聞社
千原ジュニア (c)朝日新聞社
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■業界関係者の間で「ピザ見た?」が挨拶代わり

 現在、ネットフリックス(Netflix)で配信中のドキュメンタリー「邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相」が一部で話題になっている。2003年にアメリカ・ペンシルベニア州で実際に起こった「爆死事件の真相」を追い求めた、鬼気迫る実話100%のドキュメンタリー作品なのだが、その圧倒的なクオリティーと物語性が話題となり、千原ジュニア(44)が自身のトーク番組「にけつッ!!」(読売テレビ/10月29日放送)で紹介した。また、映画監督の大根仁をはじめとするカルチャーに造けいが深い書き手たちがコラムやSNSなどで絶賛。口コミなどは拡散し、瞬く間に人気タイトルとなった。映画やドラマ業界では「ピザ見た?」が挨拶代わりになったとも言われている。

 気になる本作の幕開けはこうだ。銀行強盗直後に、すぐさま警察官に囲まれた1人の男。彼の胸元は膨らんでおり、何かを巻きつけられているのがわかる。「ピザを配達しにいったら時限爆弾を無理やり巻きつけられ、銀行強盗を強要された。俺には時限爆弾がついている! 爆弾を解除する鍵を取ってきてくれ! 嘘じゃない!」と叫ぶピザ配達人。その模様を、駆け付けたTVクルーが撮影している。そして突然、鳴り始める爆弾の警報音。次の瞬間、爆弾処理班の到着を待たずして、無情にもピザ配達人が爆殺されてしまう――。

 本作品の魅力について、映画関係者がこう語る。

「第1話でピザ配達人が爆殺されるという衝撃的な幕開けから始まる本作ですが、奇跡的にTVクルーがこの瞬間をリアルタイムで撮影していたため、爆殺シーンが一瞬だけ写りこむんです。放送コードが日々厳しくなっている地上波では、まずお目にかかれないこのシーンだけでも、見る価値があります。また、本作は実在する怪事件『ピザ配達人爆殺事件』の真相を究明していく構成になっていますが、当時の捜査官や関係者、囚人仲間など、すべて顔出しで取材に答えています。正義のためなら顔出しも厭わないのはアメリカ人らしいですが、仮に日本でこれを撮影するとしたら、登場人物にはすべてモザイクを強いられるでしょうね」

 果たして、ピザ配達人が爆殺される間際に叫んだ言葉は真実か狂言か。物語は二転三転し、“天才”を自称するある女に行きつくのだが……。

「予想外の結末には誰もが愕然とするはずです。また、この女が取引のために弁護士とカメラ越しに話すシーンがあるのですが、実在の映像を使っているにもかかわらず、女優ばりに無罪を主張するこの女の語りがあまりにも凄いので、このシーンはさながら映画のよう。ほかにも登場人物全員にそれぞれの思惑があり、全員が顔出しでキャラが立っているため、北野武監督の『アウトレイジ』やタランティーノ監督の『パルプフィクション』に引けを取らない“上質のクライムムービー”の域に達している犯罪ドキュメンタリーだと思います。目利き力の高い千原ジュニアさんや大根監督が絶賛するのも頷けます」(前出の映画関係者)

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