毎年、センター試験が終わったあとの1月中旬からは、五反田駅からTOCビルまでの道路に塾・予備校の講師やスタッフ、学生バイトらがずらりと並ぶのが風物詩。受験生たちにアピールできる絶好の機会だ。進学塾ビッグバンお茶の水校の山口寛樹校舎長は、五反田ならではの特徴をこう説明する。

「東京の他の会場は道路使用許可申請通りに配布できますが、五反田は警察に道路使用許可を出した後、くじ引きで配布場所が決まります。混雑する駅前では配布できず、指定された場所で配ります。緊張した表情の生徒に声をかけて激励し、笑顔になればうれしいですね。時計を忘れた生徒に時計を貸したこともあります」

■牛丼にコーヒー

 受験生にとって、通った塾や予備校の先生、スタッフたちに激励の“援軍”を受けるのは、心強い味方だ。医系専門予備校メディカルラボ本部教務統括の可児良友さんも、こう話す。

「全国に25校舎があるため、滞在先近くの校舎でも自習室を使えますし、講師やチューターに質問できます。入試当日は、ロゴの入ったジャケットを着たスタッフからの応援があるだけで落ち着くみたいですね。生徒の中には受験票を忘れたり、おなかの調子が悪くなったりなど、さまざまなトラブルが起こることもあるため、そのようなトラブルにもすぐに対応しています」

 自校の生徒の激励と、パンフレット類の配布が目的だが、受験生が受け取ってくれるよう、各校では、直前予想問題、文房具、お茶、お菓子、のど飴、携帯カイロなどを同封し、工夫を凝らしている。筆者も渡されるままに各校から受け取ると、一次試験の学力試験、二次試験の面接・小論文に役立ちそうなもののほかに、浪人が決まった人向けのパンフレット類も入っていた。そんな状況を予測してか、各校からの配布物を入れられるように、大きな袋で配っている予備校まであった。

 五反田での熱き戦いは、まだまだある。医学部予備校メディカの亀井孝祥代表は10年ほど前に、なんとTOCビル近くにある牛丼チェーン「すき家」とコラボしたという。

「現在は、解答速報をネットに掲載していますが、当時は牛丼の引き替えチケットを渡して、お昼に午前中の入試問題を受け取り、試験後に解答速報を配っていました。2年目、3年目はタリーズカフェのホットコーヒーを配りました」

 前述のとおり道路での配布場所を選ぶことができないため、TOCビル近くのビルの1階のエントランス部分を有料で借りて、配ったこともあるという。

次のページ
短期決戦の戦略