「医師国家試験の受験を控えた卒業生が、『入試当日の応援がうれしかったので、後輩の受験生を応援したい』と言って、配布を手伝ってくれたことがあります。私は数学を教えているのですが、北里大学の最寄り駅の相模大野駅で生徒から質問を受けたときに、一緒にバスに乗り、大学までの車中で教えたこともあります」(メディカの亀井さん)

■短期決戦の“戦略”が重要

 私立大医学部は定員が1学年で100人程度にもかかわらず、受験者数は2千人を超えるところが多く、倍率が10倍以上になることは、もはや当たり前。そんな状況下に、学生のなかには試験会場選びで“心理戦”に打って出ることも。

「大学は『どの会場で受けたかは合否に関係ありません』と言っていますが、あえて東京会場ではなく、地方にある大学のキャンパスで受験して『第一志望』であることをアピールする生徒もいますね」(医学部専門予備校YMSの小柴允利講師長)

 志願者動向を大きく左右する各大学の試験日程は、会場確保の状況で決定する。実は、19年の医学部一次試験は1月27日から2月2日にかけて、3~4の複数の大学が同一日程で実施され(31日は1大学)、この期間に集中している。つまり、受験生は短い期間で合格可能性、移動日、休養日などを考慮したスケジュールを組む“戦略”を練る必要がある。

 前出の国際医療福祉大学は、18年も19年もセンター試験2日後の一次試験実施で、私立大医学部入試ではもっとも早い。なぜか。

「本学では、受験生一人につき60分もの面接を二次試験で課しているため、二次選考日を6日間確保しています。多くの大学が合格発表を行う時期に本学も合格発表をするために、一次選考を早めに設定しています。センター試験の2日後ですが、国公立大志望の受験生にも受けてもらいたいため、開学初年度からセンター試験利用入試を実施しています」(国際医療福祉大学入試事務統括センター)

 近年は一般入試、推薦入試のほかに、センター利用入試、地域枠入試、国際バカロレア入試などを導入する大学が増え、入試の多様化が進んでいる。

「特に、センター利用入試が増えていますね。ただ、国公立大が第一志望の受験生が多いため、合格しても入学する生徒は少なくなりますが、センター試験で高得点の成績優秀な受験生の入学につながります」(駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長)

 私立大医学部の一次試験は、TOCビルのように大会場で行われることが少なくないため、当日、人の多さに圧倒されないことも大切だ。しばらくは続くであろう五反田での“決戦”にも注目だ。

(文/庄村敦子)